一覧へ戻る

人類学者はなぜ異文化をめざすのか

関心ワード
  • フィールドワーク 、
  • 人類学 、
  • 未来 、
  • 牧畜 、
  • 生き方

講義No.g009996

異文化を鏡に自社会の姿を知る~異なる社会を比較研究する人類学~

他者を鏡に自分の姿を知る

 「人の振りみて我が振りなおせ」という格言があります。他人の嫌な言動や態度をみたら、それを自分に置きかえて省みようという意味ですが、人類学もこれに似た考え方をします。自分の振る舞いを、客観視することはとても難しく、だからこそ異文化に生きる人々と一緒に暮らし、驚きや違和感を手がかりに、私たち自身のことを知ろうとするのです。また逆に、私たち自身のことを手がかりに、彼らの振る舞いを理解しようともします。哲学が本を片手に考えをめぐらせるのとは対照的に、人類学はフィールドに出かけて、身体で体験しながら人間について考える学問です。

自信に満ちた牧畜民

 あなたは自信に満ちて生活していますか? 北ケニアの牧畜民と暮らすと、彼らがとても自信に満ちていることがわかります。一方で学生に「自分はダメだと思ったことがあるか?」と聞くと、ほとんどの学生が手を挙げます。ということは、この感覚はあなただけが感じる個人的な現象ではないということです。むしろ日本の社会こそが、あなたにそう思わせているのだと考えられます。牧畜民と私たちの社会を比べることで、自己肯定的な生き方を実現するヒントがみえてきます。

充実した今を生きる

 牧畜民たちは、どうして自己肯定的な生き方ができるのでしょうか。フィールドワークによって、彼らは家畜とともに生きており、「子どものうちは羊の放牧を、青年になると牛の放牧をする」というように、自分の未来を予測できる社会に生きていることがわかります。一方、私たちが暮らす現代の社会は、「未来を現在よりもよくするために、人は変わり続けなければならない」という価値観をもとに作られており、人は常に「このままではダメだ」と変化を求められます。
 近年、私たちの社会も大きく変わり、未来の不確実性も高まってきました。不確実な社会を生きるにはどうしたらよいでしょうか。地域の人たちの考えを拾いあげ、充実した「今」を生きる術を考えることも、人類学の大切な役割です。

この学問が向いているかも 人類学、地域研究

弘前大学
人文社会科学部  教授
曽我 亨 先生

先生がめざすSDGs
メッセージ

 人類学は総合学問です。国語、地理歴史、公民、数学、理科、芸術、外国語などあらゆる分野が関係しています。受験のためでなく、社会を見る目を養うために学ぶことをお勧めします。また、新聞をよく読み、世界の出来事や、日本の中の異文化(主流から排除される人々)に関する記事にも目を配りましょう。最新の科学技術や製品の誕生は、人々の賛否を呼び起こしますが、それも異文化をめぐるひとつのフィールドだと思います。ボランティア活動などで地域に出かける機会があれば、いろいろな人に会い、生の声を聞くことも大切です。

先生の学問へのきっかけ

 大学時代は理学部で生物学を学んでいましたが、子どもの頃に出会ったハチ捕り名人や、山できのこを採る人など、自然と深くつながりながら生きる人に興味と関心を抱いていました。そこで大学院では人類学を専攻し、アフリカの遊牧民と暮らしながら、自然環境と人のつながりというテーマで研究をしました。青森の大学に赴任後は、ゼミの学生とともに地元のリンゴ農家や出稼ぎ労働者、漁師などのもとを訪れ、地道なフィールドワークをしながら、人口減少に悩む日本社会で、持続可能な未来をいかに作っていくかという研究に力を入れています。

大学アイコン
曽我 亨 先生がいらっしゃる
弘前大学に関心を持ったら

 弘前大学は、人文社会科学部、教育学部、医学部、理工学部および農学生命科学部の5学部からなる総合大学で、すべての学問の基礎的領域をカバーしています。
 この総合大学という特性を生かして、本学では教養教育と専門基礎教育を重視した教育を行い、これからの社会に対応できる人材を育成することを目的としています。
 本学の学生は、歴史と伝統のある文化の香り高い弘前市で学びながら、地域の自治体や企業などと連携し、さまざまな活動に積極的に参加しています。