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ヒト多能性幹細胞を用いた疾患研究

関心ワード
  • 分化 、
  • 医学 、
  • 発生 、
  • 再生医療 、
  • 病気 、
  • 生物 、
  • 細胞 、
  • iPS細胞 、
  • 神経細胞(ニューロン) 、

講義No.g009732

謎が多い「脳神経細胞の病」をiPS細胞で再現し、究明する!

iPS細胞の活躍場所は再生医療だけじゃない

 2006年に誕生したiPS細胞は、「何にでもなれる細胞=人工多能性幹細胞」として有名になったことで、一般には「病気やケガなどで損傷した組織を再生する『再生医療』に役立つもの」と認識されているでしょう。しかしiPS細胞の活躍の場はほかにもあります。病気の患者さんの体細胞からiPS細胞を作り、それを患部の細胞に分化させて研究すれば、今までわからなかった病気の原因や、治療薬開発の手がかりを探ることができます。特に、外部から容易にアクセスできず、いまだ謎が多い脳疾患の究明に、この方法が光明をもたらします。

脳の神経細胞減少が難病を引き起こす

 人間の脳にある一千億個以上の神経細胞は、複雑なネットワークを構成して機能しています。脳の神経細胞は再生して補うことが難しいため、一度死んでしまうと情報伝達に影響が出て、脳のいろいろな機能に支障をきたします。このような脳の神経細胞減少で起こる病気を神経変性疾患といい、アルツハイマー病、パーキンソン病、ALS(筋萎縮性側索硬化症)など、数々の難病があります。脳は胃腸のように患部の生体検査ができず、MRIなどの画像診断技術を用いても、なぜどのように脳神経に変化が起こって症状を引き起こしているのか、詳しくはわかりません。

患者さんの病態を細胞レベルでリアルに再現

 例えば脊髄小脳変性症は、小脳や脳幹、脊髄の神経細胞が変性してしまうことにより、徐々に運動障がいが現れる難病です。脊髄小脳変性症には何十種類もの病型がありますが、それぞれの患者さんからiPS細胞を作製して神経細胞へと分化させれば、病態を培養皿の中で再現して比較できます。つまり、病型ごとに神経細胞の変化や薬効をリアルタイムで検証でき、病気が「見える化」できるのです。
 さらにiPS細胞の技術は、細胞が分裂して生物の組織や機能が作られる仕組みを医学的に研究する「発生医学」の基礎研究分野でも、さまざまな検証を実現できる画期的な手段となり得るのです。

この学問が向いているかも 発生医学、細胞工学、幹細胞応用医学

関西医科大学
医学部  教授
六車 恵子 先生

先生がめざすSDGs
メッセージ

 人間の体の仕組みや生命に関わる医学・薬学分野は日々進歩し、新しい治療法や薬剤の開発が急速に進んでいます。その土台を支えているのが数々の基礎研究分野です。トライ&エラーの長い道のりを経て、未来に応用される新しい科学的な種が生まれます。
 基礎研究に向いているのは、日常の物事にも不思議を感じて、どうして?と興味を持ち、自分でその不思議に答えを出したいとか調べてみたいと思える人です。世の中の事象を科学の眼で究明する喜びを、あなたにも味わってほしいと願っています。

先生の学問へのきっかけ

 私は中学・高校で理数教科が好きでした。当時いわゆる「リケジョ」は少なかったのですが、大学受験準備のクラス分けでは迷わず理系を選びました。面白い化学の先生に習ったことで、有機化合物を作る学問に興味がわき、その分野で研究者になろうと決めました。大学でも化学を専攻しましたが、たまたま一般教養の講義で脳神経学の教授の話を聞き、不思議で壮大な脳の仕組みと細胞の美しさに衝撃を受け、それが私にとって一生の研究対象を見つけた瞬間となりました。脳と神経細胞とiPS細胞の関係は、科学の未来へ続く先進のトピックです。

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六車 恵子 先生がいらっしゃる
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 「全学年が学ぶキャンパス」「研究施設」「附属病院(本院)」が同一場所に揃い、「医科大学としての真の学園」。その教育研究施設は、現在の日本の医科大学の中でも有数の機能と設備を備えています。新学舎という最新・最強の器が完成し、これに加えて、入試改革、教育カリキュラムの抜本的改変、全学的研究プロジェクトの立上げなど中味の充実を図り、関西医科大学の教育と研究環境は飛躍的に向上します。