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ドナウ川の洪水に人々はどう接してきた? ハンガリーの環境史

講義No.11298

川から歴史が見えてくる

 環境に関する歴史に着目すると、世界各地の人と自然の関係の違いがみえてきます。例えばヨーロッパを流れるドナウ川は、もともとは曲がりくねって流れ、頻繁に洪水を引き起こすような川でした。ドナウ川はドイツからルーマニアまで多くの国をまたいで流れますが、源流と河口の高低差は日本の河川に比べるとゆるやかです。そのため上流で豪雨が降っても下流で洪水が起こるまでの時間には余裕があります。ただし一度あふれてしまうと、水が引くまでに長い時間がかかりました。

ドナウ川とハンガリーの人々の共生

 そんな厄介にも思えるドナウ川ですが、その中流域に住むハンガリーの人々は、長い間、川との共生関係を築いていました。
 18世紀以前は、強固な堤防を作ることが技術的に難しかったため、ハンガリーの人々は洪水を前提にした生活をしていました。氾濫しやすい場所から村まで、あらかじめ水路を引いていたのです。水路を流れてきた水は農業や生活用水、染物などに利用していました。あふれた川の水が引いていくときは、水路の入り口にわなを仕掛けて魚を捕る人もいて、農業以外で食料や収入を得る方法としても活用していました。

ドナウ川を変えたハプスブルク家

 18世紀になるとドナウ川に対する人の支配が強まります。ハンガリーを統治していたハプスブルク家は18世紀以降、ドナウ川を利用して農作物を運搬しようと考え、川を改造し始めました。その結果、曲がりくねっていた川は直線となり、水路も埋め立てられていきました。
 しかし、川を窮屈な流れに押し込めたため、雨量が多い時には水があふれ、農地に流れ出すことが増えました。また、かつて川が流れていた土地では、内水(ないすい)という、地面から水が湧き上がる現象も起こりました。政治の介入によって、人々と自然との共生関係が変化してしまったのです。こうした問題に対してハンガリーの人々は、産業革命の頃から蒸気ポンプで水をくみ上げる地道な方法で対処してきましたが、洪水は、いまでも地域の人々の悩みの種です。

この学問がむいているかも歴史学、環境史、地域研究

東海大学
文化社会学部 ヨーロッパ・アメリカ学科 准教授
飯尾 唯紀 先生

先生がめざすSDGs
メッセージ

 あなたの身の周りで起きることに限らず、海外など少し離れた場所の出来事にもアンテナを張ってほしいです。情報を入手するときはスマホやテレビで目に入るものだけに注目するのではなく、積極的に図書館や大きな本屋さんに行ってみることをおすすめします。偶然出会った本から思わぬ興味関心に気づくかもしれません。
 また、世界の出来事が自分の身の周りに及ぼす影響などを考える習慣をつけると、世界と自分との関わりを実感できるようになります。広い視野で物事をとらえ、大学での学びに生かしてください。

メッセージ

 大学に進学した1990年代前後は東欧革命などが起きており、教科書であまり習わなかったハンガリーやポーランドなど東ヨーロッパの国々をニュースでよく目にしていました。日本で東欧の研究がまだ盛んではなかったので、西欧との違いなどを知りたいと思い研究を始めました。ハンガリーに留学していた頃、日本とヨーロッパの川の違いを不思議に思ったことが環境史を始めたきっかけです。当初は政治と宗教の関係を歴史的に探っていましたが、それだけでは見えてこない人々の生活の変化も環境史から探りたいと考えています。

メッセージ

教諭(高等学校)/観光業/日本語教師/専門商社(食品)

※夢ナビ講義はそれぞれの先生の見解にもとづく講義内容としてご理解ください。

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