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牛のオスとメスはどうやって産み分ける?

講義No.10861

哺乳類の生殖の謎を解き明かす

 生物生産学とは、動物生産や農業生産分野を研究するものです。実は哺乳類の生殖については、まだ解明されていないことがたくさんあります。その中で「なぜ動物によって一度に生まれる頭数が異なるのか?」「オスとメスがほぼ半数の割合で生まれるのはなぜなのか?」など、これら生殖の謎を解くことは、畜産において生産性を高めるための大切なファクターです。

オスとメスの産み分けに高まる期待

 研究の1つに、オスとメスの産み分けがあります。ヒンドゥー教で牛は神聖な動物とされ、食べることが禁止されていますが、牛乳を飲むことは許されています。ヒンドゥー教徒の多いインドでは、肉牛は不要だけれど乳牛は欲しい、つまりメスの牛の需要が高いのです。一方、海外輸出品としても人気が高い日本の和牛はオスの需要が高くなっています。しかし哺乳類の自然出産では、オスとメスの生まれる比率はほぼ1対1です。オスとメスを分けるのは、性染色体「X染色体(メス)」と「Y染色体(オス)」です。そこで、牛を体外受精させるときに、X染色体を有する精子だけを効率的に分離して受精させられないかという研究が進められました。

X精子とY精子の機能差を利用して分離

 X精子とY精子はこれまで同様の機能をもつと考えられてきましたが、実は両者には潜在的な機能差があり、X精子にのみTLR7という受容体が発現していることがわかりました。そこで精子にTLR7だけが感知するRNAウイルスの薬剤を与えると、X精子だけ動きが鈍化しました。機能差がはっきりしたことでX精子とY精子を分離しやすくなり、オスとメスの産み分けが可能になったのです。
 生物生産学の観点から大切なのは、こうした研究の成果を、低コストかつ簡便な方法で実用化できるようにすることです。家畜の生産性の向上は、広くは酪農産業の活性化や、食糧難や貧困問題の解消など、社会貢献にもつながると期待されています。

この学問がむいているかも分子生物学、生物生産学、農学

広島大学
生物生産学部 分子農学生命科学プログラム 教授
島田 昌之 先生

先生がめざすSDGs
メッセージ

 農学は視野の広い分野です。「生物」をキーワードに、農業、酪農、食品などの産業や、植物、動物の研究など、多様な学びのフィールドがあります。よく「何をしたいかわからない」という人がいますが、農学は「こういうことのためにこれを学ぶ」ということがわかりやすい分野です。
 特に広島大学では入学後にプログラムを選択するので、興味を持ったところから知識を広げていけるでしょう。「生物」をもっと知りたい、興味があると思うなら、ぜひ農学をめざしてみてください。

メッセージ

 生物は好きというわけではありませんでしたが、生物だけでなく様々なものがなぜそうなっているのかを知りたいという衝動はありました。生物は緻密な設計図を精巧に作動させて生命活動をします。例えば「人間」という完成品があるとして、設計図の中身のメカニズムを理解したいと、設計図を紐解くツールである分子生物学を学び、その仕組みの理解を人の健康、食糧生産に活用するため生殖生物学の研究を行っています。このような基礎研究を社会に生かすことを研究の社会実装と言いますが、具体的に役立つことをしているのが研究のモチベーションです。

メッセージ

ベンチャー起業家/大学教員/製薬会社開発業務/食品会社研究員/公務員/生殖補助医療胚培養士など

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島田 昌之 先生がいらっしゃる
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