夢ナビ

コミュニケーションで大切な「小さな単語」

講義No.10842

アンデルセンの『はだかの王さま』

 アンデルセンの『はだかの王さま』は、仕立屋に扮(ふん)した詐欺師が「ばかの目には見えない布地」で王さまの服を作ります。ばかだと思われたくない王さまは、その服を着て(実際は下着姿で)パレードをします。周りの大人もやはりばかと思われたくないために見えないとは言いませんが、それを見た子どもが「王さまははだかだ」と叫ぶというお話です。

気持ちを伝える心態詞

 この子どものセリフはデンマーク語の原文では、「Men han har jo ikke noget på.」です。Men は英語のbut, hanはhe、harはhas、ikke nogetはnothing、påはonです。これらを日本語に直訳すると「だけれど、彼(=王さま)は何も身につけていません」という意味です。それでは残るjoは何をしているのでしょうか?このjoは話し手が自分の主観的な気持ちを伝える「心態詞(しんたいし)」という役割をするもので、「(話し手の)自分が言っていることは、(聞き手の)あなたも同意してくれるはずだ」というニュアンスを伝えています。つまり、この子どものセリフには「王さまは何も着ていない!」という事実に加えて、「王さまが何も着ていないことは、(王さまの新しい服が見えるかのように装って、褒め讃えている大人の)あなたたちもわかってるよね」という話し手(=子どもの)の意図も込められているのです。たった2文字の小さな単語ですが、この心態詞の役割をきちんと理解できると、この子どものセリフのより深い理解につながります。

コミュニケーションで重要な役割

 心態詞はドイツ語・スウェーデン語・ノルウェー語などにも存在しています。またデンマーク語には、jo以外にも複数の心態詞があります。どれもとても小さな単語ですが、コミュニケーションを図る上で大切な役割を果たしています。心態詞が全く使われない会話は実際不自然に感じられます。ですから外国人学習者にとっては、必要だけれども習得が難しいものの1つです。

この学問がむいているかも外国語学、言語学、デンマーク語学

大阪大学
外国語学部 外国語学科 デンマーク語専攻 講師
大辺 理恵 先生

先生がめざすSDGs
メッセージ

 高校までの勉強は、問題に対して決まった正解を出さなければなりません。しかし、正解を出して点数をもらうという高校までの勉強と、大学での学問はまったく違います。大学の授業では「これはまだ答えが出ていません」「これにはいろいろな解があります」「今の優勢な解釈はこの2つです」というような唯一の正解がない現在進行形の問題もあります。
 正解に近づこうとすること自体が学問なのです。自分の好きなことを選んで、時間を忘れるほどの楽しい学びを、ぜひ大学で経験してください。

メッセージ

 日本語とは違う文字や文法のある外国語そのものに興味がありました。外国語の勉強でトライアルアンドエラーを重ねながらルールを見出していくところにゲームのような面白さを感じたのです。英語以外の外国語の選択を考えた時、日本では話せる人が少ないマイナーな言語に挑戦してみようと思ってデンマーク語を選びました。デンマーク語は、英語と似ている語彙も多く、文法も比較的難しいものではありませんが、綴りと実際の発音が掛け離れているために、日本人にとっては習得が難しい言語の一つだと思います。

メッセージ

官公庁/総合商社/航空会社/通信事業など

※夢ナビ講義はそれぞれの先生の見解にもとづく講義内容としてご理解ください。

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夢ナビ編集部