夢ナビ

手術前の「不安」に関する客観的なデータが求められている

講義No.10724

正確な計測が難しい患者の不安

 手術前の患者は不安になります。しかし、問診で不安の程度を知ることは簡単ではありません。最高を100として今の気分を聞いてみると、不安の境界線は45程度になります。大丈夫だと言っていても心拍数や血圧を計測するとそうでないことがわかります。不安に見せないように取り繕っているだけで、我慢していることも少なくありません。患者の緊張度が高いと手術を中止せざるをえない場合があるので、不安の問題は大きいのです。

緊張すると健康に悪影響がある

 不安が大きいと患者の健康にも影響があります。緊張すると心拍数が上がり、特に高血圧や狭心症など持病がある人は心臓に負荷がかかります。手術に対する不安は交感神経を優位にさせるため手先の血管が収縮するので手先が冷たくなります。手術をするために必要な全身麻酔は痛みを感じないようにする利点もありますが、外界の刺激に反応しなくなる欠点もあります。手術室では医師たちが手術に集中するために室温は低く設定されていますが、交感神経が遮断されるためにリラックスした状態と同じように手先の血管が拡張し、手先が温かくなります。手術前に緊張していた患者は、手先が冷たく体の中心にこもっていた熱が全身麻酔によって次第に体の中心から熱が奪われ低体温になってしまいます。麻酔から覚めると、寒い身体を自覚するために筋肉が収縮し、体が震えます。すると必要以上に酸素を消費するため、大切な臓器である心臓などに十分に酸素がいかなくなり、さまざまな合併症が生じる問題があります。

科学的な姿勢が求められる看護

 以前は手術を実施することが優先で、患者の不安についてはあまり注目されていませんでした。患者の不安を予測したり簡便に正確に計測することはいまだに課題です。問診だけでは不十分で、客観的なデータを示さなければ、医師や看護師は問題を共有できません。看護では勘や経験が重視される傾向がありますが、問題を解決するには、看護師にも科学的なデータ重視の姿勢が求められます。

この学問がむいているかも手術看護学

静岡県立大学
看護学部 看護学科 教授
田中 範佳 先生

先生がめざすSDGs
メッセージ

 自分の道を切り開くには、運を引き寄せることが必要です。そのためには、自分にできる目標を段階的に実現していき、支援をしてくれる人に対しては、それを受け入れて積極性を示します。自分に与えられた機会を大切にしてほしいです。小さな目標でも実現できれば周りに認められますし、支援してくれる人は最後まで責任を持ってサポートしてくれます。
 私が大学に進んだのも、論文を書いたのも、ほかの人の支援のおかげです。最初は小さな興味でかまいません。それを大きく育ててください。

メッセージ

 私は人の役に立ちたいと思い看護の道を志しました。准看護師を養成する学校に進学しましたが、大病院は正看護師のみが採用されることを知り、正看護師の受験資格が得られる短期大学に進学しました。その後、大学病院で働きながら大学や大学院に進学し卒業しました。就職先の病院では、医師の助言を受けて、それを最大限に生かして論文を発表するなど自分の活躍するフィールドを広げてきました。現在は、手術看護という領域で、手術や麻酔に関する看護について研究や技術開発を行っています。

メッセージ

看護師

大学アイコン
田中 範佳 先生がいらっしゃる
静岡県立大学に関心を持ったら

 静岡県立大学は、5学部9学科を有し、国際化・情報化・高齢化・環境問題という21世紀における最重要課題を展望しつつ、新しい時代を支える有為な人材の育成を目的としています。自主性や公共性を強く意識し、地域社会からの評価を得られるように、大交流時代において選ばれる大学を目指します。研究分野では、文科省のグローバルCOEプログラムに採択され、研究レベルが国内トップクラスといえます。

TOPへもどる