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現代社会のリスクにどう対応するか? 科学と政策決定の新たな問い

講義No.10696

リスクはゼロにはならない

 現代社会において、さまざまなリスクに対応していくことは重要な課題となっています。例えば、医薬品の副作用のリスクをコントロールしたり、地震発生時の被害を最小限にしたり、気候変動によるリスクを抑えていくことが求められています。その際、リスクを科学的に評価し把握することが重要ですが、科学にはつねに不確実性がともないます。私たちは科学の不確実性を前提に、リスクへの対応策を決めていかなければなりません。リスクをコントロールするためには科学が必要ですが、科学だけでは処理できない問題もあるのです。

科学的助言に基づく政策決定

 リスクへの対応では、科学的合理性とともに社会的合理性が求められます。リスクに対する定量的・分析的アプローチだけでなく、リスクに対する人間及び社会による判断に基づくアプローチを併せて考え、合意形成を行い、政策に反映していく必要があるということです。
 一般に、政策や意思決定のために科学者たちが専門知識に基づいた提案をすることを、「科学的助言」といいます。科学的助言に基づいて政府がリスクに対応するための措置をとったり、さまざまな政策を決めたりします。科学者と政府が適切な距離感をとりつつ、協力して社会的な課題を解決していくことがますます求められています。

新型コロナウイルスがもたらした課題

 2020年の新型コロナウイルス対応では、科学的助言がきわめて重要な役割を果たしました。しかし逆説的なのは、科学的助言の体制が最も整っているとみられていた英国や米国で科学と政治の協働がうまくいかなかったことです。逆に日本では、科学的助言の体制整備が進んでいたとは言えなかったにもかかわらず、感染症対策分野の優れた科学者が政府と密接に連携して実効性のある方策(クラスター対策など)を講じました。緊急時には結局、科学者と政府との間の形式にとらわれない協働が必要だったということです。新型コロナウイルス対応の経緯は、科学的助言のあり方に関する議論に新たな問題を提起したといえます。

この学問がむいているかも科学技術史、科学社会学

新潟大学
創生学部 人文社会科学系 教授
佐藤 靖 先生

先生がめざすSDGs
メッセージ

 近年、科学技術の進展のスピードが速くなってきています。また、科学技術が私たちの仕事や生活に直接関わりをもつようになっています。いまは、科学技術に一定程度関心をもたなければ活躍することが難しい時代だといえるでしょう。一方で、科学技術に直接関わる仕事をする人も、社会とのつながりを認識し、科学技術が社会のなかで果たすべき役割について考えることが必要になってきています。これから大学で学ぶあなたは、自分の専門だけではなく、ぜひ幅広い視点をもち、将来の社会を見据えて主体的に学んでいって欲しいと思います。

メッセージ

 学生時代は理数系科目に夢中になっていました。数式や物理法則には美しさと驚きがあり、そこに世界の真理があると思っていたからです。しかし当時の日本では理系の専門家になっても社会での活躍の場は狭いように思われました。科学技術は社会のなかでどういう位置づけにあるべきかを考えるようになり、大学卒業後はいったん公務員になって、その後アメリカに留学し科学技術の歴史を学びました。
 いまではこれらの経験を全てあわせるような形で、科学技術と社会との関係について、時代の変化を見据えながら幅広く研究しています。

メッセージ

公務員(県庁職員)/会社員(小売、都市開発、企画、制作など)

大学アイコン
佐藤 靖 先生がいらっしゃる
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 新潟大学は教育面を最も重視し、学生が自らの専門を深く極めるばかりでなく、広い視野をもち、物事を総合的に判断する力を身につけること、及び実践と体験を通したきめ細かい教育を行うことによって、学生一人一人の個性を伸ばすことを目指しています。さらに、教養教育と専門教育を融合させた教育プログラムを提供し、特定の課題・分野の学習成果を認証したり、異なる学部の学生と教職員で構成されるグループが地域住民とのふれあいを通じて人間的成長を目指すなど、本学の理念である「自立と創生」に基づく学生育成を実践しています。

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