「あったらいいな」を世の中の当たり前にするデザインの力
講義No.10691
デザインが新しい価値を作り出す
よく勘違いされますが、製品をかっこよく目立たせることがデザインではありません。世の中の困りごとを見つけ出し、解決するために必要なことを、モノやサービス、情報などを通して具現化し、新しい価値を作り出すことがデザインの本質的な役割です。
例えば、キーを差し込んで回すことなく車を始動できるキーレスやスマートエントリーシステムは、「座っただけでエンジンをかけたい」という発想から生まれたユニバーサルデザインで、誰でも簡単に車のロックを解除しエンジンをかけられるようになりました。
世の中が変わるきっかけになる
車いすを利用している人が駅の改札を通れるように、幅の広い自動改札機が設置されています。これは車いすの人だけでなく、大きい荷物を持っている人やベビーカーを押している人にも、使いやすさを提供しています。これも、安心や快適をもたらすユニバーサルデザインです。しかし、これで終わりではありません。手がふさがっていると、切符を通したりICカードをかざしたりするのも大変ですが、顔認証システムが導入されればICカードを使わずに通ることができ、改札機も不要になります。このような問題意識がさらなる改善点を見つけ出し、デザインが世の中を変えるきっかけを作っていくのです。
より良い社会をめざして
身体障がい者とともに働く場所を作ったり、生活に必要なサービスを受けられずに困っている人のために社会全体の仕組みを作り出したりと、制度やサービスそのものをデザインの力で生み出すソーシャルデザインにも、デザイナーは大きく関与しています。
デザインには、「あったらいいな」と思い描いていたことを、「世の中の当たり前」にする力があります。問題点や改善点はないか、持続可能な社会に貢献できることはないかを常に考えながら、デザインは、世の中を良くするためにいつも進歩を続けているのです。