夢ナビ

人間の作り出した光が招く、昆虫の奇妙な行動

講義No.10632

街灯の下で動けなくなるタガメ

 「飛んで火に入る夏の虫」ということわざがあるように、多くの昆虫は光に引き寄せられる「正の走光性」という性質を持っています。例えば水生昆虫のタガメは走光性が強く、夜に飛んでいると水銀灯などの街灯に誘引されて落下しますが、その後に動けなくなります。夜行性のタガメは、強い光に遭遇すると昼間だと勘違いして行動を抑制してしまうからです。タガメは動けなくなったまま、脱水症状を起こしたり、動物に食べられたり、車にひかれたりして死ぬこともあります。一方、街灯が消えて暗くなると、30分程度で飛び立てるようになることもわかっています。

明るい道路に落下するイナゴ

 石川県ではハネナガイナゴが大量に飛翔する夜があります。このイナゴも街灯に誘引され、地面に落下します。落下したイナゴは飛び立つことができますが、楕円の軌跡を描いて再び地面に落下してしまいます。これは「失速ターン」と呼ばれる現象で、地面がアスファルト舗装された場所で多く見られます。アスファルトに反射した街灯の光を空と間違えて、体を反転させてしまうのです。結果として、たくさんのイナゴが道路上で一晩中失速ターンを繰り返し、車にひかれて死んでしまいます。

昆虫の激減を防ぐ環境作り

 世界各地で昆虫が激減しており、今後数十年で、およそ40%もの昆虫が絶滅すると予想されています。ハチによる受粉のように、私たちは昆虫からさまざまな「生態系サービス」と呼ばれる恩恵を受けています。昆虫の激減が生態系サービスの消失を生み、人間がその役割を担わなければならないとすれば、人間の生活は高い代償を払うものになるでしょう。昆虫の急減の原因の1つは、人間が作り出した人工光によるものです。人為的に作られた環境を、昆虫は人間とは違うようにとらえます。同じ場所に人間と昆虫がいても、受ける刺激や情報はまったく異なるのです。昆虫の奇妙な行動を招くメカニズムを解明し、適切に利用することで、昆虫に優しく、また人間にも優しい環境を取り戻すことができるのです。

この学問がむいているかも動物行動学、応用昆虫学、植物保護学

石川県立大学
生物資源環境学部 生産科学科 准教授
弘中 満太郎 先生

先生がめざすSDGs
メッセージ

 大学では、世界中でまだ誰もやっていないことを熱心に取り組んでみてください。入り口は誰かから教えてもらったことであったとしても、その先は教えてくれた先生でさえ知らないことを自分が見つけだすという気持ちを持ちましょう。
 ただし、それは決して一人で取り組むのではありません。大学の研究や勉強は、今の自分では到底できないと思えることを、専門の先生、仲間、先輩に協力を仰いで成し遂げていくものです。自分に知識をつけながら、取り組みたいと思っているテーマで協力してくれる人を募って達成していってほしいです。

メッセージ

 高校生の頃は魚や鳥が好きだったので、動物の研究を夢見ていました。そんな時に、世界で初めてカメムシの子育てを発見したというニュースを新聞で読み、昆虫も面白そうだと感じたことから、その発見者であった応用昆虫学の先生のところに押しかけるように進学したのです。昆虫の中には害虫と呼ばれるものも絶滅が危惧されるものもいて、防除と保護という非常に難しい舵取りをしなければいけません。害虫は適度な数まで減らし、害虫ではない昆虫には優しい環境を提示するという、非常に難しい課題に挑戦しています。

メッセージ

官公庁研究者/教諭(高等学校教員)/食品メーカー技術者/不動産マーケティング/食料小売販売

大学アイコン
弘中 満太郎 先生がいらっしゃる
石川県立大学に関心を持ったら

 人間の暮らしの根幹を支えている農業生産。その基盤となる自然環境。そして食べるということ。そうした人と自然との関わりをしっかりと見つめ、未来へ生かしていこうとすること。そんな思いを実現するために、本学では少人数制での指導体制(卒業研究指導時、教員1人に対し学生3人以下)を取っています。結果、就職率100%、官公庁就職率25%(2020年3月卒業生)という実績を上げており、地域社会のニーズに応えられるよう努めています。「住みよさランキング2020」全国1位の「ののいち」で私たちと一緒に学びませんか。

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