夢ナビ

「農業用水」で作った電気で地域を活性化

講義No.10629

里山農業地域が抱える問題

 里山の農業地域の多くは高齢化、過疎化、農家の担い手不足、耕作放棄地の増加という問題を抱えています。若い農業従事者の定住は、それらの問題で疲弊した地域が元気を取り戻す、地域活性化の一つの解決手段になるでしょう。そのためには、ブランド農産物の開発や、労働を軽減するスマート農業の導入が望まれます。その手段の一つとして、農業用水を使った水力発電があります。

水力発電でイチゴ栽培

 産学連携の取り組みを一つ紹介します。石川県の山間にある農業用水の排水を落差約11mで放水している個所があり、この落下点に小さな水車を設置して、水力発電が行われています。発電出力は6~10kWです。ここにビニールハウスを設置し、イチゴ栽培を始めました。内部を暖めるエアコン2機分の6 kWを水力発電でまかなっています。
 余剰の電力は土壌温度を上げるための温水と、IoT(モノのインターネット)技術を使った監視システムの稼働用に使います。監視システムではハウス内の気温、CO2濃度、日射量、土壌水分量がデータ化されるほか、発電を遠隔操作することもできます。イチゴ栽培は経験による技術習得が必要とされてきましたが、可視化されたデータにより若い農業従事者がチャレンジしやすくなります。

2050年の脱炭素社会に向けて

 日本国内の農業用水路の延長は40万kmで、地球から月までの距離に相当します。これら水路の水を発電に用いることができれば、100万世帯分を超える電力量が得られます。現在の日本は電力網が「大規模集中型」の電力システムのため、災害で一つの発電所が停止すると、大規模な停電が起きてしまいます。地域で電気をつくる場所があれば、人々の生活を守ることができるでしょう。
 2050年の脱炭素化社会に向かって、再生可能エネルギーを推進する必要があります。「小規模分散型」の水力発電の技術が確立すれば、例えば都市においてもビルの屋上に置いた雨水タンクから水を落とすことで発電するといったことができるようになるかもしれません。

この学問がむいているかも環境科学、環境利水学、農学

石川県立大学
生物資源環境学部 環境科学科 教授
瀧本 裕士 先生

先生がめざすSDGs
メッセージ

 自分が住んでいるところのことだけでなく、農産物が採れる場所、電気をつくる場所のことを考えたことがありますか? いま、それぞれの地域の環境を健全に守っていく取り組みが必要とされています。あなたが、それにはどうしたらいいかを考えることに関心があるなら、環境科学という分野に進んでもらいたいです。
 地域の調査をしながら研究を進めるプロセスはとても楽しく、また地域の人たちに喜んでもらえることは、研究するうえで大変励みになります。そういった経験を一人でも多くの人に味わってもらいたいです。

メッセージ

 小さいころから、人が生きていく上で必要なものは「水」と「食べ物」だと考え、この2つをつなぐものとして農業に興味を持っていました。そこで、大学は農業土木といわれる分野に進み、農業用水の研究に取り組みました。水の量や質に関する研究を進め、現在はエネルギーという新しい視点で用水を見つめなおしています。日本のみならず、東南アジアなどではまだ地域水力発電を必要とする場所は多い一方で、製品化されたものはわずかです。身近な用水を利用した水力発電システムは世界にアピールできる日本の技術になるはずです。

メッセージ

官公庁総合土木技術職員/建設・環境コンサルタント技術者/電気・電子・機械メーカー技術者

大学アイコン
瀧本 裕士 先生がいらっしゃる
石川県立大学に関心を持ったら

 人間の暮らしの根幹を支えている農業生産。その基盤となる自然環境。そして食べるということ。そうした人と自然との関わりをしっかりと見つめ、未来へ生かしていこうとすること。そんな思いを実現するために、本学では少人数制での指導体制(卒業研究指導時、教員1人に対し学生3人以下)を取っています。結果、就職率100%、官公庁就職率25%(2020年3月卒業生)という実績を上げており、地域社会のニーズに応えられるよう努めています。「住みよさランキング2020」全国1位の「ののいち」で私たちと一緒に学びませんか。

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