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比べると見えてくる、古代語と現代語の文構造の特徴

講義No.09168

古代語と現代語の気づきにくい特徴

 古代語でも現代語でも、それぞれ単独では気がつきにくい文構造の特徴があります。例えば、古文で、雉(きじ)がありますかと聞かれて、「虚言(そらごと)を、『あり、取りにおこせよ』と言へば」という文章があります。これはそのまま読み過ごしてしまいますが、ふと考えると、現代語では、「『あるよ』と嘘を言う」と言えても、「嘘を『あるよ』と言う」とは言わないでしょう。つまり、古文にはなかった語順の制約が現代語では生じているということです。現代語で「~させられる」と言いますが、古代語ではこのような使役受身文は存在せず、「す・さす」と「る・らる」は「~られさす」という語順で現れます。

古代語と現代語の文法体系の違い

 また、語順だけでなく、文法体系にも古代語と現代語の違いはあります。現代語の「昨日寝る前に電話した」は、「寝た」のも「電話した」のも昨日のことですが、これを「昨日寝た前に電話した」とは言えません。しかし、古文には、「くづほれ(衰弱)させ給はざりしさきに、などか仰せられざりし」という文があって、「給はざりしさきに」の「し」は過去の助動詞「き」の連体形ですから、「昨日寝た前に」という言いかたが成立しています。助動詞「き」の文法的意味は過去だと習いますが、それだけではすまない、時を表すシステム自体が、現代語と古代語とで異なっている、というわけです。同じ日本語なのに、不思議です。

それぞれに深まる理解

 この、主節と従属節での時制の表しかたの違いなど、古代語と現代語を対照すると、いろいろなことが見えてきます。「べし」はある場合には「ようだ」、ある場合には「はずだ」と訳されますが、それを理解するためには、現代語の「ようだ」と「はずだ」がどう違うかを知らなければなりません。古代語の「遅く参る」はそのまま「遅く参上する」と現代語訳すると誤訳になってしまいます。古代語と現代語とを比べることによって両者の仕組みがより詳しくわかるようになります。

この学問がむいているかも日本語学

國學院大學
文学部 日本文学科 教授
小田 勝 先生

メッセージ

 進路を選ぶためにも、教養を深めるためにも、新書本を読むことをお勧めします。その中で、あなたの知らない学問に出会えるかもしれません。どんな学問があるかを知らずに進路を決めてしまうのではなく、まずは、広い世界を知りましょう。
 私は最初に、岩波新書によって日本語学の面白さに触れました。日本語学という学問は、高校までの国語とは違い、日本語がどういう仕組みになっているかを追究する学問です。頭の中で自然に出来上がっている文章の仕組みを見いだしていく、とても面白い学問なのです。

メッセージ

 日本語研究に興味を持ったのは、高校時代に岩波新書の『日本語の文法を考える』という本を読んだときです。そこには、「私は小田です」と「私が小田です」の違いは何か、ということに対する解説が書かれていました。「あなたは誰ですか?」という問いに対する答えが「私は小田です」であり、「小田は誰ですか?」という問いに対する答えが「私が小田です」であるという鮮やかな解説を読み、すっかり感心してしまいました。また、和歌や古文も好きだったので、現代文と古文の両方を比較して、両方の文法について理解を深めていきました。

※夢ナビ講義はそれぞれの先生の見解にもとづく講義内容としてご理解ください。

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