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人形は生きている? 肖像画は怖い?

講義No.08659

イコンはキリスト教美術の出発点

 東日本大震災の後、東北で人々の心の支えとなった絵があります。女性画家の山下りん(1857~1939年)が描いた、イコンと呼ばれる聖像画です。山下りんは、日本初のイコン画家として知られていて、そのイコン画は、東北を中心に日本各地に収められています。
 木や石や土などを使って神仏をかたどった像を偶像(アイドル)と言います。偶像は神そのものではなくモノに過ぎない、という旧約聖書の教えによりキリスト教では偶像崇拝は厳しく禁止されていました。イコンは、その偶像を否定して成立したモノであり、中世キリスト教美術の出発点ととらえることができます。

芸術から、子どもの感受性を思い出す

 小学生の頃、音楽室の音楽家の肖像画を怖いと感じたことはありませんか。まるで生きているように、じーっと見られているようで、それが怖いと感じるのです。こうした子どもの感受性をモーゼは否定しています。アニミズム(動植物のみならず無生物も霊魂を持っているという世界観)を否定し、モノはモノだから怖くない、というのが旧約聖書のメッセージです。
 しかし感受性は人間の本能的で根源的なものであり、日常に満ちているものです。人は成長とともにその感受性を失っていきますが、芸術を通して子どもの感受性を思い出すことが大切です。それが人間を豊かにするからです。

芸術や文化にみる、歴史観・宗教観の相違

 日本人の多くは、捨てられない昔の人形を持っています。なぜでしょう? そこにはアニミズムが存在するからです。日本にはアニミズムを否定する旧約聖書はないからです。旧約聖書を背景に持つ欧米人にとって、人形はモノですので、たとえ捨てがたいと感じることはあっても、その必要があれば捨てます。モノに魂は存在しないし恐れることはないと考えているからです。こうしたものの考え方、とらえ方の根底にある、西洋と日本の宗教の違いが、芸術や文化に現れているのです。

この学問がむいているかもキリスト教文化学、宗教学、芸術学

東北学院大学
文学部 総合人文学科 教授
鐸木 道剛 先生

先生がめざすSDGs
メッセージ

 子どものときの感受性を忘れていませんか? 大人になっても子どもの感受性が大事だということを思い起こさせるのが、私の研究テーマです。
 「モノ」は生きていない、という旧約聖書の教えがない日本には、偶像(アイドル)が満ちています。仏像に秘仏(見せない仏像)があるのは、「生きているものは見世物ではない」という考えが根底にあるからです。そうした宗教の相違がもたらす美術と文化財の観念の違いについて、一緒に学んでいきましょう。

メッセージ

 初めての海外旅行でモスクワの印象が強く、根源はビザンティン美術だ!と思った私は、ユーゴスラビアに留学しました。帰国後、岡山大学で助手をつとめながら、聖像画(イコン)の研究を続けましたが、日本では日本にあるイコンを研究するほかなく、そこで出会ったのが、山下りんという日本初のイコン画家でした。
 東北学院大学に移り、現在は宗教と芸術や文化の関連や、ステンドグラスの研究などを行っています。また東北地方には山下りんのイコンが数多く残っており、その研究も続けています。

※夢ナビ講義はそれぞれの先生の見解にもとづく講義内容としてご理解ください。

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鐸木 道剛 先生がいらっしゃる
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 東北学院は、1886年(明治19年)に誕生して以来、キリスト教精神に基づく「人間教育」を展開し、これまで約18万人もの卒業生を社会に送り出してきました。
 一人ひとりの学生を大切にする「学生本位」の姿勢。
 それは、130余年を数える歴史の中で、いつも変わらずに流れ続けている私たちの考え方。
 東北学院大学というステージで、あたらしい未来を、可能性を、ぜひ手に入れてください。

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夢ナビ編集部