夢ナビ

世界文学の研究で、世界平和の実現も夢ではない!

講義No.08616

文学をとらえる視点の変化

 「世界文学」と聞くと、世界文学全集を連想するかもしれません。20世紀前半までの文学研究は、それらを読んで見識を広めるだけでしたが、現代は違います。イギリス文学、アメリカ文学、ロシア文学などは、自分たちこそ世界の中心だと思って世界を動かしてきた強国の価値観の表出です。こうした偏見によって表された世界が、英米露の文学だったというのが現代の認識です。

ローカルを超える文学作品

 かつて、文学は作者のもので、作品の問いかけへの答えも作者が持っていました。読者はその価値観に寄り添って読めばよかったのです。それが20世紀後半、根本的に変わり、読者、つまり誰が読むのかが重要になりました。そもそも文学作品は「ローカル」です。文学作品は、ある時代に、ある地域の文化や思想の中で育った人によって書かれます。
 しかし、ローカルな文学作品が地域や文化の境界を越えて読まれる時、ローカル性が一部捨てられ、新たな価値観が付け加えられます。例えば、中東の人が村上春樹を読む時、日本文化を知らなくても中東の文化や価値観に基づいて理解します。それが解釈であり、日本人読者と中東の読者の解釈は同じではありません。

世界文学の解釈が平和を導く可能性

 世界文学という考え方をメジャーにしたのは、デイヴィッド・ダムロッシュの『世界文学とは何か?』という評論です。本来はローカルな文学作品が世界文学として読まれると、作者すら想像していないような解釈が異文化によって付け加えられたりして、解釈の対立が必ず生まれます。歴史的には、この対立を放置したり、攻撃したことで命が奪われることもありました。宗教戦争、中国の文化大革命などです。
 対立はなくならなくても、どう乗り越えようかと考え始めれば、そこから異文化への理解が始まり、異なる価値観が融和し、双方が納得できる解釈が生まれるかもしれません。古代から現代までの幅広い文学研究は、世界をどうとらえていくのかを考える格好のツールなのです。

この学問がむいているかも文学

高知県立大学
文化学部 文化学科 准教授
鳥飼 真人 先生

メッセージ

 私はイギリス文学を研究しています。文学研究とは、単なる架空の物語を読み、それについて感想を述べ合うだけの学問ではありません。文学作品は、いま生きている現実の世界を考える上で、非常に役立つツールなのです。
 文学研究によって培われた文学的センスは、あなたがこれから社会で活躍するために必要不可欠な、実用的なセンスです。文学研究に興味があるなら、私たちと一緒に高知県立大学で文学を学びましょう。

メッセージ

 中学2年生の時、英文法で挫折したのですが、高校で文法をしっかり教わり、イギリス人の外国語指導助手の先生の授業も楽しく、英語が好きになりました。大学は英文科に入り、2回生の時に文学批評理論の授業を受けて、文学研究が社会や世界のあり方を考えることに直結する面白さを知りました。読み方の理論が体系化されていて、多様な学問を援用したアカデミックな読み方が衝撃的でした。
 文学研究は、マルクスの経済論を援用した文学批評、フロイトの精神分析を用いて作者の心理を研究する方法など、さまざまな手法を理論化した学問です。

※夢ナビ講義はそれぞれの先生の見解にもとづく講義内容としてご理解ください。

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鳥飼 真人 先生がいらっしゃる
高知県立大学に関心を持ったら

 高知県立大学は、文化学部、看護学部、社会福祉学部、健康栄養学部の4学部で構成しています。高知県は全国と比較して、高齢化で10年、人口減少で15年も先行しています。少子高齢化社会や南海トラフ地震対策など山積する課題を乗り越えて、未来の社会をどう形成するかに、学生と教職員は真剣に取り組んでいます。全学生が地域で活動し、地域の人々とともに学びあう教育に力を入れており、卒業後には、学部で身につけた専門知識を生かして地域で活躍できる人材となることをめざしています。

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夢ナビ編集部