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家族に父がいない社会? ~異文化理解から人間を探究する~

講義No.08107

文化によって異なる「家族」の形

 「家族」と聞いて、誰を思い浮かべますか? 父親、母親、兄弟姉妹……? 実は、家族という概念は、地域の文化によって作り出されたものです。ですから、住む場所や時代が違えば、家族の線引きも当然異なります。南インドのナヤール人は、少し前までは、父親と一緒に暮らしていませんでした。遺伝上の父親は、最初から別居しており、「通い婚」の形で、ときおり母を訪れて来るだけです。その代わり、母の兄弟(母方おじ)が一緒に暮らしていました。彼らもよそに妻を持っています。

父親が身内ではない社会

 さて、ナヤール人の子どもにとって、父親はどんな役割を持っていたのでしょうか? 父親は、子どもが小さい頃から、一切面倒を見てくれません。一緒に暮らさないのですから、まあわかる話です。では、子どもが何か悪いことをしたり、逆に人から乱暴を受けたとしたら、どうでしょうか。日本人の感覚からすれば、別居している父であっても、自分のことのように叱ってきたり、子どもの代わりになって殴り込みをかけに行ったりするはずです。しかしナヤール人の父は何も関心を見せません。ナヤール人にとって父とは、一緒に住んでいないだけでなく、そもそも何のつながりもない存在なのです。父親は身内に入っていないということです。子どもにとって近しい身内男性は、その代わり、母の兄弟です。身内の範囲についての考え方は、社会によってこうも異なるのです。

「文化人類学」とは?

 異文化研究の学問である「文化人類学」は、家族や身内だけでなく、衣食住から性、恋愛、死に至るまで、異文化の生活のあらゆる側面に関心を持ちます。しかし、いつも見えてくるのは、私たちが当たり前だと考えている常識は実は当たり前ではないということです。世界には自分の常識とは全く異なる常識を生きる人々がいるということを手がかりに、人間生活のあらゆる側面について深く考える力をつけていく、これが文化人類学の学びです。

この学問がむいているかも文化人類学

東北学院大学
教養学部 言語文化学科 教授
津上 誠 先生

メッセージ

 「人が生きるということは、人に何かを与えることで、それこそが生きる喜びだ」と、私は考えています。人に新しい気づきをもたらす人、みんなが一つの方向に行きかけている時に立ち止まり、「ちょっと待って」と言うことのできる人は、人に何かを与えられる人です。
 文化人類学では、当たり前や常識を崩して、自由に物事を考えていきます。とりわけ、文化人類学のフィールドワークは、新たな気づきをもたらしてくれます。人を動かすことのできるユニークな発想ができるよう、大学で大いに学んでください。

メッセージ

 小学生時代からきょうだい構成による性格の違いなど、人間観察に興味がありました。大学は社会学科でしたが、西欧近代的な社会を扱う社会学よりも、常識を覆す異文化に視野を広げた上で人間について考える文化人類学に熱中しました。大学院では文化人類学を専攻、ボルネオ島のカヤン人の村で2年間暮らして調査をしました。授業やゼミでは現代日本の家族、ジェンダー、恋愛、死生観などを考察することが多いですが、大学時代ロンドンで4カ月暮らした経験や、ボルネオでの調査経験が、「当たり前」を疑うスタイルの基盤になっています。

メッセージ

航空業/鉄道業/旅行業/自動車販売/各種卸売/大型小売業/各種小売業/生協/広告/銀行/生保/損保/ホテル/地方自治体/小学校教員/中高英語教員/日本語教員/言語聴覚士/大学院進学

※夢ナビ講義はそれぞれの先生の見解にもとづく講義内容としてご理解ください。

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津上 誠 先生がいらっしゃる
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 東北学院は、1886年(明治19年)に誕生して以来、キリスト教精神に基づく「人間教育」を展開し、これまで約18万人もの卒業生を社会に送り出してきました。
 一人ひとりの学生を大切にする「学生本位」の姿勢。
 それは、130余年を数える歴史の中で、いつも変わらずに流れ続けている私たちの考え方。
 東北学院大学というステージで、あたらしい未来を、可能性を、ぜひ手に入れてください。

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夢ナビ編集部