夢ナビ

知っているようで知らない「漢字」の話

講義No.06997

漢字には、なぜ複数の読み方があるのか?

 漢字には、複数の読み方があります。例えば「行」という字には、音読みだけで「行動(こうどう)」「修行(しゅぎょう)」「行燈(あんどん)」の3つ、訓読みの「行く」「行う」を合わせると5通りもあり、覚えるのは大変です。実は、中華人民共和国の普通話(公用語)では行う・行くなどの意味のときは3つとも「xing(シン)」という同じ発音をするのですが、なぜ日本語には複数の読み方があるのでしょうか? それは、いつ、誰がその漢字を日本に持ち込んだのか、によるのです。

音読みの違いは、中国語の方言の違い

 修行の「ぎょう」という音は、飛鳥時代以前に日本に定着していた漢字音で、隋唐期の長安から帰国した日本の留学生たちが、この漢字音を長江以南の音を意味する呉音という呼称で呼んだからだとされています。一方、遣隋使・遣唐使の時代になると、長安地方の音韻体系を反映した漢字音である漢音とよばれる音が入ってきます。行動の「こう」という漢字音などがそれです。桓武天皇は、延暦11(792)年に漢音奨励の勅令を出しますが、既に広まっていた読み方を変えることは難しかったのです。その後、鎌倉時代以降に留学僧や民間の商人がもたらした音は唐音や宋音と呼ばれました。「行燈」の「あん」などの漢字音がそれです。

「ちょうちょう」を「てふてふ」と書いたのはなぜ

 また、中国から入ってきた言葉が日本人に発音しにくいものだと、少しずつその読み方も変化していきました。例えば「蝶々(ちょうちょう)」は、旧仮名遣いでは「てふてふ」と表記しますが、中国唐代の長安での「蝶」の発音は「d’iep(ディエップ)」という音だったようです。しかし、日本人はこの「p」音に「fu」音で対応し「てふてふ」と表記され、ハ行転呼により「fu」が「u」となり「てうてう」さらに「ちょうちょう」と変化していきました。長い時間をかけてさまざまな人や場所を行き来するうちに、中国でも日本でも少しずつ変化し、現在では全く異なる発音になったのです。

この学問がむいているかも漢文学

岩手大学
教育学部 国語教育科 教授
藪 敏裕 先生

メッセージ

 中国哲学が専門で、授業では漢文学に関わる分野を担当しています。中国文化や漢字は日本文化の基底となっており、日本人の習慣にも根付いています。教育学部には中国人留学生が多いので、交流する機会も多く、日本からも毎年数名が中国に留学しています。
 また、世界遺産の登録を受けた平泉文化の研究もしています。中国文化の影響を受けた平泉の浄土庭園は、日本のほかの都市の庭園にも影響を与えました。中国や漢字、平泉文化に興味があるなら、ぜひ一緒に学びましょう。

メッセージ

 中国哲学が専門で、漢文学に関わる授業を担当しています。父が中国思想史の研究者で、子どもの頃から中国や漢文に触れる機会が多くありました。小中学生の頃から漢文をやらされ、それが嫌で反発していたのですが、もともと思想的なものに興味があったため、高校生になっておもしろいと感じるようなりました。当初から漢学を志したわけではありませんが、結局漢学の道へ進むことにしたのです。意識するしないにかかわらず、私たちは儒教文化圏・漢字文化圏にいて、日本人のルーツを考えるという意味でも中国文化や漢字は興味深いものです。

※夢ナビ講義はそれぞれの先生の見解にもとづく講義内容としてご理解ください。

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