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インド映画はなぜ大量に制作されるのか? その理由とインド社会

講義No.06563

インド映画と多言語

 インドは世界で最も多くの映画が作られる国ですが、なぜでしょうか。その理由には、まず言語問題があげられます。インドは約260種類もの言語が話される多言語社会です。しかし識字率が低いので多くの人が字幕を読めません。そのためそれぞれの言語で映画を作るので、数が増えるのです。
 インドの公用語は一応ヒンディー語となっていますが、現在ヒンディー語を話す人は全体の30%ほどしかいません。歴史的に見るとヒンディー語に統一しようという動きがありましたが、ほかの言語を話す人たちが大反対しました。そこで、結局多くの言語が共存する国になったのです。

政治と映画のつながり

 インドで映画が多く作られる理由の2つ目が、政治との結びつきが強い点です。日本で1998年に公開された『ムトゥ 踊るマハラジャ』という映画は、タミル語を話す南部タミル・ナードゥ州の映画です。その中で主人公がタミル文化を賛美する歌を歌っています。タミル・ナードゥ州は連邦制をとるインドの中でも州の権限強化をめざしているので、歌の中にこのような政治的メッセージが込められています。政治宣伝の手段として映画が多く使われ、政治家が脚本を手がけることもあります。

多様なアイデンティティー

 インドは言語だけでなく、宗教やカーストなどさまざまなアイデンティティーが重層的に重なる社会で、人々はいくつものアイデンティティーを持ち、それらを巧みに使い分けています。2013年に日本で公開されたインド映画『きっと、うまくいく』は、裕福なイスラーム教徒や貧しいヒンドゥー教徒というように、さまざまなアイデンティティーを持った若者たちが、共に学びながらそれぞれの道を切りひらき幸せになっていくという、ある意味インドの理想を表現した映画です。
 歴史的に見ていくと、インドの多様性は多くの対立と和解の結果だということがわかります。それは一見かけ離れた日本の歴史を学ぶ上でも多くのことを気づかせてくれます。

この学問がむいているかも歴史学

専修大学
文学部 歴史学科 教授
志賀 美和子 先生

先生がめざすSDGs
メッセージ

 あなたは、歴史は暗記科目だと思っていませんか? 海外旅行に行くと、日本では当たり前のことが、世界では決してそうではないと気づくことがあります。歴史学もそれと同じで、自分の思い込みを打破してくれる学問です。また歴史学は、現代社会というものが実は過去にさまざまな人が活動し、ときに争った結果生み出されたものであって、それだけにさまざまな問題を抱えていることにも気づかせてくれます。つまり歴史学は、「現状に甘んじることなく、よりよい社会をめざそうとする力を与えてくれる学問」とも言えるのです。

メッセージ

 インドの歴史を専門にしていますが、それは意外なことに、インドが好きだったからではありません。小学生のとき、家永教科書裁判という教科書検定をめぐる裁判をきっかけに、植民地支配について考えるようになりました。人間がほかの国を支配するのはどういう意味があって、支配した側とされた側にどういう影響があるのかを知りたかったのです。でも身近な中国や韓国ではなく、世界最大の植民地であったインドを研究対象に選びました。インドは、たくさんの問題を抱えていますが、研究対象としてとても魅力的な国で、興味は尽きません。

※夢ナビ講義はそれぞれの先生の見解にもとづく講義内容としてご理解ください。

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夢ナビ編集部