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大阪医科薬科大学(2021年4月大学統合予定)の教員によるミニ講義

関心ワード
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炎症を起こす「キマーゼ」の働きを妨害し、人々を救え!

厄介な酵素が病状を悪化させる

 キマーゼという物質は、炎症を強める作用を持つ酵素です。もともと生体内にあるものですが、病気が起こっている部位や手術した部位など、炎症が起こっている場所に大量に集まります。そしてさらに炎症を強め、周りの組織にダメージを与えてしまうのです。
 例えば、心筋梗塞が起こったとき、血管の詰まったところを広げて血流を通す処置をします。ところが血管が詰まっている間にキマーゼがたくさん集まってきて、細胞にダメージを与えてしまい、せっかく処置しても状態が改善されない場合があります。ところが初期の段階で、キマーゼの働きを妨げる薬を投与すると、改善できる可能性が高くなります。キマーゼ阻害薬はまだ開発の段階ですが、大きな効果が期待されています。

心臓以外の病気にも役立つ

 キマーゼが発見されたのは1984年のことです。心臓の病変を起こした場所で大量に集まっているのがキマーゼだったのです。心疾患以外では、炎症を起こすと肝硬変にもなるメタボリックシンドロームの脂肪肝、難病のクローン病といった病気に対して、キマーゼ阻害薬はそれぞれの炎症を起こした場所で集まるキマーゼの働きを妨ぎ、症状を改善します。また、アトピー性皮膚炎、ぜんそくといった病気にも有効なのではないかと期待されているのです。

キマーゼ阻害薬の将来性

 研究が進むにつれて、キマーゼ阻害薬には副作用がないということもわかってきました。同じく炎症に効くとされるステロイドに副作用があるのに対して、安心して使用できると考えられています。
 キマーゼはいろいろな病気に必ずといっていいほど出てきます。例えば、がんは周囲の細胞をつぶしながら大きくなりますが、その周りにはキマーゼが多くみられます。そして、がんの周囲にキマーゼが多い患者さんほど、予後(病後の経過)がよくありません。がんの治療はまだまだ難しい面が多いのですが、阻害薬でがんの拡大を防げないか、抗がん剤に上乗せできないか、といったさまざまな治療の可能性が研究されています。

異分野との連携による創薬応用

この学問が向いているかも 医学、薬学


医学部  教授
髙井 真司 先生

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メッセージ

 私は実験が好きで、未知のものを発見することに魅力を感じ、新しい薬の開発をめざしています。薬の開発には、目的を明確にする必要があります。つまり、病気の原因を解析し、その原因を取り除く薬を発見することです。また、医学の道を志すあなたには、自分にあったポジションは何か、どうしたら社会に貢献できるかということを考えてほしいと思っています。最近は、チーム医療が特に重要になっています。患者さんを治すということを共通の目標に、医師、看護師、薬剤師、薬の開発者など、それぞれの立場で力を尽くしています。

先生の学問へのきっかけ

 「薬理」という学問分野に進んだのは、大学の講義で薬が発見されたエピソードを聞いたことがきっかけです。ある研究者は、食事中ですら顕微鏡を覗き、ある研究者は祭りに行ったことで大発見につながりました。研究者により発見のエピソードはさまざまですが、発見者に特別の才能があったのではなく、どれだけ病気のことを知ろうとしたかが薬の発見につながったのだと思いました。小さな研究室のたった一つの発見が、薬の開発につながり、世界中で苦しむ多くの患者さんの命を救ってきたことを聞くと、何か自分にもできそうな気がしました。

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