夢ナビ夢ナビは、さまざまな言葉をデータベースから検索・閲覧し、将来の進路を決める“きっかけ”を提供します。

講義No.09721

医療現場におけるルールのあり方を考える

治療に対する同意の有無を判断するのは難しい

 治療に際しての患者本人の同意は、臓器移植のケースなどを除くと、法律の明文で要求されているわけではありません。日本医師会で定められた内部的ルールがあるにとどまっています。ただ、同意を得ずに医療機関が手術をすれば、不適法な行為として傷害罪などに問われ刑事責任を追及される可能性もありますし、不法行為となって損害賠償を請求される可能性もあります。成年の判断能力のある者に対する治療について、本人の同意が要求されるべきであることは明らかです。そのような状態にある場合には、自分のことは自分で決められるという自己決定権が尊重されるべきだからです。しかし、同意の要請についての明文の規定がないため、心変わりする可能性のある患者から、どのようなやり方でいつ同意を得ればよいのか、意識を失っている人への治療行為や未成年者への治療行為について誰の同意が必要なのかといった、簡単には結論を導き出すことができない問題が多く残されています。

「同意が必要」という法律はない

 また、患者の意思がそのまますべて反映されるべきなのかも問題です。「苦しむのは嫌だから早く死なせてくれ」といった意思を患者が表明しているときに、医療機関がその患者の言う通りに行動してもよいのか、どこまで、患者本人の意思に委ねるべきなのかは、極めて難しい問題です。

広い視野で議論を

 海外では、このような問題に対してきちんと法律の明文で規定を置く国が増えてきています。どのような結論が最良であるか、答えを出すのは難しいことであるし、その答えは永遠に出せないかもしれません。しかし、あらゆる意見の根拠を国民の多くがきちんと理解をして議論し、国会を通して現段階におけるルールを作ることが、患者にとっても、また、患者の意思に対応しなければならない医療機関にとっても必要でしょう。

夢ナビライブ2019 東京会場

アイコン

患者の同意を規定する法律は存在しない?

アイコン

患者の意識が無い場合の治療同意は正しい?

アイコン

未成年者の治療の同意は?

アイコン

講義を視聴する(30分)

この学問が向いているかも 民法学、法学

立正大学
法学部 法学科 教授
澤野 和博 先生

メッセージ

 社会の中で起こるさまざまな事柄に、どの法律を当てはめ、どのように解決していくべきかを考えていくのが、法律学です。実際に紛争が起こっているときには、必ず両当事者それぞれにそれなりの根拠があって主張を述べています。その主張のどの部分に重きを置いて、どんな解決を図っていくべきなのかを法律に基づいて考えていくのが、法律学の面白いところです。
 法律学を通して勉強したことは、たとえ専門家にならなくても、社会に出てからのあらゆる場面において、人々の間で起こる争いの解決のために役立つはずです。

先生の学問へのきっかけ

 弁護士の父の影響もあり、法学部に進学しました。昔から医療に興味を持ち、大学院の修士課程では民法の損害賠償に関する「機会の喪失」という理論を研究しました。「機会の喪失」とは、可能性に対する損害賠償を認めることです。例えば、がんの患者が医療ミスで亡くなったが、適切な医療がなされていても生き延びる可能性が30%ほどだった場合に、生き延びられた可能性を奪われたことに対する賠償を認めるのです。これまで医療関連の訴訟について研究し続けてきましたが、今は児童の医療の問題や児童虐待の問題にも関心を持っています。

先輩たちはどんな仕事に携わっているの?

弁護士/司法書士/司法書士事務所事務員/弁護士事務所事務員/社会保険労務士/銀行員/市役所職員/保険会社外交員/不動産会社販売担当/不動産会社賃貸担当/化粧品会社販売員/飲食品メーカー総務/警察官/消防士

大学アイコン
澤野 和博 先生がいらっしゃる
立正大学に関心を持ったら

 立正大学は、人間・社会・地球をトータルでケアできる人材を育成する8学部15学科を有し、多彩な学問分野において広く深く学ぶことができます。加えて充実したキャリア形成支援により、社会の多方面で活躍する優れた人材を輩出しています。本学は1872年(明治5年)東京・芝に開校の起点となる小教院を設立し、2019年で開校147年を迎えました。品川キャンパスは山手線2駅から徒歩5分の都市型キャンパス、熊谷キャンパスは東京ドーム約8個分の広大な自然環境型キャンパスをもつ、学生数1万人を超える総合大学です。

TOPへもどる