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講義No.09667

人の行為が引き起こす病気を、誰がどう補償するのか?

食品公害は今も続く問題

 1968年に国内最大の食品公害とされる「カネミ油症事件」が発生しました。誰もが口にする食用油に、有害なPCB(ポリ塩化ビフェニル)が混入したのです。油を食べた人たちは健康を破壊されました。さらに、PCBが加熱されて発生するダイオキシンは母乳や胎盤を通じて次の世代にも引き継がれ、大きな社会問題になりました。事件発覚から約50年が経過しましたが、被害者の補償や二世の認定の問題などが今も取り残されたままになっています。

新たな環境リスクが発生する現代

 公害病の場合は、原因企業など特定の「誰か」のせいで病気になると言えます。それに対して、いわゆる環境病の場合は、「誰か」が特定できず、自分自身も原因者になることがあります。現代の社会で、私たちはたくさんの化学物質を日常的に使っています。例えば白アリの駆除剤を焚(た)いたとか、プラモデルの組み立て時に換気をしないで接着剤を使ったとか、自分自身の行為として化学物質に触れ、体調が悪くなってしまう場合があります。こうした化学物質への接触をきっかけに、学校の教室に塗布されているワックスに反応したり、周囲の人の衣類に残っている柔軟剤で気持ち悪くなったりするシックスクール症候群や化学物質過敏症が確認されています。新しい技術が生み出されることにともなって、新たな環境リスクが生まれているのが現代社会なのです。

被害への補償の範囲や方法を明らかにする

 公害病や環境病を発症した人たちへの補償、賠償というと、病気の治療費を給付することのみと考えられがちです。しかし、病気になる前には元気に働いていた人が病気になって仕事を失うとか、家で寝込むことが増えて家族から「怠け者」と言われるなど、病気にかかることの社会的影響は幅広く、これらも一種の損害であり、被害です。
 このように公害病・環境病から派生する被害にはどのようなものがあるのか、その被害を誰がどのような根拠で補償できるのか、環境社会学が明らかにしていくことが求められています。

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この学問が向いているかも 環境社会学、医療社会学

高崎経済大学
地域政策学部 地域づくり学科 准教授
宇田 和子 先生

先生の著書
メッセージ

 友だちと1対1の関係ではうまくいくのに集団になるとなぜ暴走してしまうのか、バスや教室で座るときに人はなぜいつも同じ席を選ぶことが多いのか、といった小さな疑問でも、社会学の研究テーマになります。社会学は間口が広い学問なので、その対象は、日常生活から生まれる謎はもちろん、ある地域の出来事でも、アイドルやマンガなどのサブカルチャーでも、この時代そのものでもかまいません。
 こうした疑問を解くために、社会学の視点や概念は便利な「道具」です。それを使いこなして、疑問の解を求める方法を身につけてください。

先生の学問へのきっかけ

 環境社会学の研究を始めたきっかけは、高校時代に予備校で社会学を研究していた講師に出会い、自分の持つ小さな疑問を扱える面白さに気づかされたことと、大学に進学し、東京大学の故・宇井純先生の『公害原論』という本を読んで衝撃を受けたことでした。その後、大学院に進み、環境社会学の視点から、食品公害の被害者救済のための補償や政策について研究を続け、2015年に『食品公害と被害者救済―カネミ油症事件の被害と政策過程』という本を出版しました。新たな食品事故は今も世界で起きており、決して過去の問題ではありません。

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宇田 和子 先生がいらっしゃる
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 高崎経済大学は、約3万人近くの卒業生が全国各地で企業のトップや地域で官民リーダーとして活躍しています。本学の教育・研究の目的は、幅広い教養を身につけ、豊かで、幅広い人間性に富み、国の内外と地域の向上発展に寄与する人材を育成することです。また、「自主・自立」を理念とし、学生の自主性を尊重するとともに、自立性を助長することを大学教育全体の方針としています。
 全員が少人数のゼミナールに所属します。ゼミナールでは専門知識の取得とともに、地域・社会活動などのフィールドワークが取り入れられています。

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