夢ナビ夢ナビは、さまざまな言葉をデータベースから検索・閲覧し、将来の進路を決める“きっかけ”を提供します。

講義No.09634

恐ろしい寄生虫でも、生態を知ることで感染リスクを回避できる

アニサキスはクジラの中にいたい

 アニサキスという寄生虫が注目を集めています。アニサキスは本来、クジラのおなかに生息する寄生虫で、そこで成虫になり産卵します。卵はフンとともに海に排出され、オキアミというプランクトンに食べられます。オキアミは、イカやサバ、カツオ、ホッケなどに食べられますが、こうした魚の中では成虫にはなれず、主に内臓部分に寄生したり、筋肉に留まったりして、クジラに食べられるのを待っています。ところが、これらの魚が漁師の網にかかり、寿司や刺身などとして、生の状態で人間の体内に入ると、アニサキスが人の胃や腸に刺さって、食中毒に似た腹痛を起こします。それがアニサキス症です。

少しずつ解明されてきたアニサキスの生態

 アニサキス症が有名になったのは、2012年の食品衛生法の改正後です。ほかの寄生虫と合わせて「その他」と分類されていたものが、独立した項目になり、被害が可視化されたことが大きな理由と考えられます。ただ、アニサキスはマイナス20度で24時間しっかりと冷凍したり、焼いたりすれば死ぬので、注意すれば感染を防ぐことができます。ちなみに、アニサキスにも種類があり、人間に感染しやすいのは、アニサキス・シンプレックスとよばれる中のセンス・ストリクトというタイプだということがわかっています。

寄生虫研究の目的は感染防止だけではない

 アニサキス以外にも、人に悪さをする寄生虫は多く、マラリア原虫のように命に関わるものやエキノコックスのように発症まで10年近くかかり、重篤な症状を引き起こすものもいます。ただし、それぞれの生態(生物学の専門用語では、生活環と言う)がわかれば、感染を防ぐことができます。そのため、感染防止につながるよう、日々研究が行われています。また、寄生虫は特定の生物にしか寄生しない場合も多く、寄生虫を調べることで鳥の生態がわかる場合や、対象地域の環境の変化がわかることもあります。寄生虫研究には、こうした環境調査に対する期待も向けられているのです。

アイコン

講義を視聴する(1分)

アイコン

講義を視聴する(1分 その2)

アイコン

講義を視聴する(1分 その3)

アイコン

講義を視聴する(30分)

この学問が向いているかも 寄生虫学

麻布大学
生命・環境科学部 環境科学科 准教授
川上 泰 先生

メッセージ

 私たちの研究室では、アニサキスなどの寄生虫、蚊やマダニなどの衛生害虫を材料として、さまざまな研究を行っています。研究室に届いた魚から寄生虫を取り出すこともあれば、野外に調査に行き、採取した貝や蟹などから寄生虫を探すこともあります。最近では、寄生虫を遺伝子解析し、さらに生態(生活環)を調べることもあります。
 生き物が好きな人にとっては、非常に面白く、やりがいのある研究室です。ぜひあなたも一緒に研究しましょう。

先生の学問へのきっかけ

 私は、寄生虫や衛生害虫を専門に研究しています。ただ、最初からこうした分野に興味を持っていたわけではありません。高校時代は医者をめざしていたのですが、挫折もあって断念し、環境生物を学ぶ大学に入りました。実習では、ネズミを学内で捕獲し、寄生虫を取り出すといった、今では考えられないようなことも行っていました。今から思うと、とにかく衝撃的でしたが、先輩たちも親切に教えてくれ、寄生虫が私たちの生活に身近であることがわかったこともあり、寄生虫への興味が深まっていきました。

大学アイコン
川上 泰 先生がいらっしゃる
麻布大学に関心を持ったら

 はじまりは1890年に開設した東京獣医講習所でした。
 まだ栄養状態が豊かでなかったこの国の、人の生活を豊かにするため、畜産の発展に寄与するため獣医師の養成をはじめました。それから約130年の時を経て、人の社会と動物のかかわりは深くなり、複雑になり、生きものすべてが新しいバランスで循環する「いのちのあしたのあり方」が求められています。
 これが私たちの目指す「地球共生系」です。
 最先端の研究と確かな実践力で、「人と動物と環境」に向き合い、地球のあしたをつくる。これが私たち麻布大学です。

TOPへもどる