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講義No.09623

なぜ公害被害者は被害を訴えず、問題は解決しないのか

終わらない二つの水俣病問題

 1959年に熊本水俣病、1965年に新潟水俣病が公式発表されました。どちらも工場排水に含まれた有機水銀が原因です。食物連鎖による高濃度の有機水銀を蓄積した海魚・川魚を食した人々は水俣病患者となりました。症状としては手足のしびれ、味覚障がい、感覚障がいなどがあり、目に見えにくい症状です。2019年現在、熊本、大阪、東京、新潟で患者さんたちによる裁判が続いています。問題はいまだ解決していません。

長年にわたって被害を訴えられない事情

 21世紀に入って、ようやく自分の病を「水俣病だ」と自ら訴えることができた人たちによる裁判です。なぜ今なのでしょうか? 水俣病だと名乗り出ることで、「うつるのではないか」「遺伝するのではないか」と言われ、子や孫までが差別に巻き込まれてしまう恐れ、裁判を起こせば「金が欲しいから、嘘をついているのではないか」と言われてしまう恐れ、水俣病に認定され、得た補償金で、家を建て替えると、「水俣御殿だ」と言われてしまう状況もありました。名乗り出ることが非常に困難な地域社会ができあがっていました。「子どもが就職・結婚した」などそれぞれの理由で、ようやく名乗り出た人たちが今の裁判の原告です。

調査の現場からわかったこと

 実際に患者さんたちの話を聞いてわかったことがあります。大学病院での検査で「うそついているんだろ」と言われたこと、集落で最初に認定されたために魚が売れなくなるからと仲間はずれにされたこと、会社の慰安旅行で「あの人はミナだから」と部屋を別にされたことなど、健康被害が職場や地域社会にも影響する派生的被害・二次的被害がそこにありました。このような二次的被害はほかの公害病でも、また災害でも起きています。こうした二次的被害を防ぐためには、みんなが病気や被害の状況を正確に知り、理解することが不可欠です。環境社会学は実際に現地に行き、関係する主体・組織に調査をして、その原因と克服のための方策を研究します。

参考資料
1:被害者運動と申請件数(新潟)

夢ナビライブ2019 東京会場

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この学問が向いているかも 環境社会学

立正大学
文学部 社会学科 教授
堀田 恭子 先生

メッセージ

 私は現場第一主義の「環境社会学」が専門です。そもそも社会学は「当たり前のことを疑う」学問です。ですから環境問題の現場でなくても大丈夫です。まずは気軽に外に出て、アンテナを張ってさまざまな人や風景に出会い、たくさんのことを感じ取ってください。そして好奇心旺盛に本やテレビ、新聞、ネットなど多様な媒体(メディア)にふれて、知識や感性を蓄えてください。現場で感じたことが多様なメディアを経ることで、あなた自身の中の「ねばならない」を解放してくれるかもしれません。それを助けてくれるのが社会学的な考え方です。

先生の学問へのきっかけ

 社会学に興味を持ったきっかけは、高校1年の現代国語の授業でした。人間関係を扱った評論の著者が社会学者で、当時、友人関係で悩む中で「社会学ってどんな学問だろう」とふと思ったのが最初です。大学は社会学部に入りましたが、音楽サークルに熱中していたため、社会学をもう少し学びたいと大学院に進学しました。博士課程2年生の社会調査の授業で新潟水俣病の現場に行き、聞き取り調査をしたのが環境社会学との出会いでした。聞き取りを断られることもありますが、それ以上に新しい出会いに力づけられ、多くのことを学んでいます。

先輩たちはどんな仕事に携わっているの?

農産物を取り扱う商社/地方公務員/JA(農協)

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堀田 恭子 先生がいらっしゃる
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 立正大学は、人間・社会・地球をトータルでケアできる人材を育成する8学部15学科を有し、多彩な学問分野において広く深く学ぶことができます。加えて充実したキャリア形成支援により、社会の多方面で活躍する優れた人材を輩出しています。本学は1872年(明治5年)東京・芝に開校の起点となる小教院を設立し、2019年で開校147年を迎えました。品川キャンパスは山手線2駅から徒歩5分の都市型キャンパス、熊谷キャンパスは東京ドーム約8個分の広大な自然環境型キャンパスをもつ、学生数1万人を超える総合大学です。

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