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講義No.09574

物語の解釈は時代によって変わる! ~『源氏物語』享受の歴史~

見ただけで内容を伝える挿絵の力

 物語を読み解く手がかりは文章だけではありません。挿絵(さしえ)からも、人々が物語をどのように解釈していたかを感じ取ることができます。挿絵には文章の持つイメージが凝縮されており、一目で物語の内容を伝える効果があります。短編ならすぐに読めますが、『源氏物語』のように長編になると途中で挫折してしまう人もいます。しかし絵であれば、物語をわかりやすく伝えることができるのです。

絵巻から見える『源氏物語』の解釈

 物語の享受(読まれ方)にはさまざまなレベルがあり、『源氏物語』をよく理解して描かれた絵巻には解釈の深さが表れています。2006年に発見された『源氏物語』の絵巻には、ほかの源氏物語絵巻には描かれていない場面が描かれています。源氏物語の屏風(びょうぶ)や絵巻は通常、お祝い事のようにおめでたい用途に使われていたため、それまでは正月のシーンなど縁起のよい場面が描かれた絵巻ばかり発見されてきました。しかしこの絵巻では、第十帖「賢木(さかき)」で藤壺が悩みぬいた末に出家するというシリアスな場面が、緻密な描き込みと解釈で描かれています。藤壺の出家は物語の中で特に重要であるため、この場面を選んだ作者がいかに『源氏物語』を深く読み込んでいたかがわかります。

物語の解釈は時代とともに変わる

 『源氏物語』の解釈が記された注釈書の変遷をたどると、時代ごとの人々の考えや社会の様子もわかります。第十三帖「明石」で家の改修についての交渉役を担っているのが男性なのか女性なのか、という解釈が例として挙げられます。現代では交渉にまつわる会話文はすべて父親のものだととらえられていますが、中世では母親が一人で、あるいは父親と母親が一緒に交渉をしていると解釈されています。江戸時代あたりから社会的に男性優位になったため、ジェンダー的に発言者の解釈が変わったと考えられます。社会の枠組みの中でどのように物語をとらえてきたかという時代ごとの理解の積み重ねが物語享受の歴史となっているのです。

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この学問が向いているかも 古典文学

立正大学
文学部 文学科 日本語日本文学専攻コース 教授
小嶋 菜温子 先生

メッセージ

 物語を正しく理解することが文学研究の原点です。古典の正確な読解に必要な文法は高校までに習います。文法ばかりで退屈でしょうが、大学では「使える文法」を実感できます。同時に、日本語の歴史を体感できる喜びを味わえるのです。
 私は昔「古典なんて現代とは関係ない」と思っていました。しかし現代は過去の積み重ねであり、今生きている時代もすぐに過去になるのです。古典は現代の文化享受(文化の受け入れ方)の歴史を見つめ直すきっかけにもなります。「現代の解釈で古典を読むとどうなるか」などと考えると新たな視野が開けます。

先生の学問へのきっかけ

 私は高校時代、古典文法の授業があまり好きではなく、夏目漱石などの近現代の文学を好んでいました。しかし大学の授業で源氏物語を改めて読んだとき、その面白さに気づき、平安時代の文学を中心に研究するようになりました。近年は文学を読み解くヒントとして、物語絵巻の研究にも力を入れています。特に幻の源氏物語絵巻は、2006年に一部が発見されて以来、情報収集や分析に取り組んでいます。まだ判明していないことの多い幻の源氏物語絵巻に魅力を感じ、現在はこれまでに集めた絵巻を分析し、復元の経過報告をまとめています。

先輩たちはどんな仕事に携わっているの?

中高教員/大学職員/図書館司書/民間企業

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小嶋 菜温子 先生がいらっしゃる
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 立正大学は、人間・社会・地球をトータルでケアできる人材を育成する8学部15学科を有し、多彩な学問分野において広く深く学ぶことができます。加えて充実したキャリア形成支援により、社会の多方面で活躍する優れた人材を輩出しています。本学は1872年(明治5年)東京・芝に開校の起点となる小教院を設立し、2019年で開校147年を迎えました。品川キャンパスは山手線2駅から徒歩5分の都市型キャンパス、熊谷キャンパスは東京ドーム約8個分の広大な自然環境型キャンパスをもつ、学生数1万人を超える総合大学です。

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