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講義No.09449

養殖業の新時代 ~ゲノム解析で病気に強い魚を作る~

養殖業はこれからの産業

 現在、世界中で消費されている動物性タンパク質のうち、およそ3分の1を魚介類が占めています。しかし、FAO(国連食糧農業機関)の試算によると、2030年には、必要とされる魚介類のうち約5000万tが人口増加などによって不足するとされています。つまり、養殖業をより効率化しないと、消費に追いつかないということです。養殖業は今、世界的に注目され、伸びている産業であるとともに、豊かな食生活の実現のために、今後ますます重要になっていく産業でもあります。

ゲノム解析による効率化

 農業や畜産の世界では、数千年以上も昔から、家畜化すなわち「育種」が行われてきました。育種とは多数の個体の中から、「成長が早い」「病気に強い(耐病性がある)」など、人間にとって役に立つ性質を持った個体を選抜し、交配することで、より有用な種を育てる作業です。その結果、現代の穀物や家畜は、野生種ではあり得ないほど成長も早く、病気にも強くなっています。
 水産業では、人為交配により仔稚魚を作り、育てるのが難しいなどの理由から、なかなか育種が進んできませんでした。しかし現在では、ウナギやマグロのような魚でも完全養殖が可能になり、さらに養殖魚のゲノム解析が進んだため、耐病性形質を左右するゲノム領域を特定し、遺伝マーカーにより耐病性形質の有無を調べて選抜する「マーカー選抜育種法」が可能になってきました。この方法は、効率的に確実に病気に強い品種を作れるだけでなく、耐病性形質のメカニズムの解明にもつながります。

海洋資源を守るために

 ゲノム解析による育種はかなり進んでおり、2008年に出荷された養殖ヒラメの約3分の1が「マーカー選抜育種法」で生まれた耐病性ヒラメだというデータもあります。日頃食べているヒラメの多くが、こうして育種された耐病性ヒラメだということです。
 FAOは、「天然資源に極力影響を及ぼさないような方法によって食糧をまかなうべき」と提唱しています。ゲノム解析の進歩によって、そんな将来に近づきつつあるのです。

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この学問が向いているかも 水産遺伝育種学

東京海洋大学
海洋生命科学部 海洋生物資源学科 教授
坂本 崇 先生

メッセージ

 私は昔から、「何かをやらされる」ことはとても苦手でしたが、自分が好きなこと、自分でやると決めたことに対しては、寝る間を惜しんでがんばることのできる人間でした。勉強は、自分にとって必要なものであれば「やらされるもの」ではなくなります。
 例えば将来、わからないことを調べるのに、英語の文献を読む必要があるとわかれば、英語を勉強するでしょう。好きなことの追究に役立てるためにも、基礎となる知識は得ておきましょう。自分がやりたいことを見つけるため、そしてその可能性を広げるために、今の勉強をがんばってください。

先生の学問へのきっかけ

 埼玉県出身で、子どもの頃は家の近くにまで金魚売りがやってくる時代でした。釣り好きだった父の影響もあってか、魚が大好きになり、小学生の頃からベランダに水槽を並べて金魚やニシキゴイを飼い、「将来は魚の研究をしたい」と公言していました。
 ある年の夏休みに、埼玉県の水産試験場(現:水産研究所)に見学に連れて行ってもらい、ますますその思いを強くします。大学で水産学を学び、研究者への道を歩む中で、恩師に、「きみの長所はあきらめずに粘り強くやれることだ」と激励され、それが自分の特長だと思ってがんばってきました。

先輩たちはどんな仕事に携わっているの?

農林水産省公務員/水産教育・研究機構研究員/地方公共団体研究員/水産・食品会社研究員

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坂本 崇 先生がいらっしゃる
東京海洋大学に関心を持ったら

 東京海洋大学は、全国で唯一の海洋にかかわる専門大学です。2大学の統合により新しい学問領域を広げ、海を中心とした最先端の研究を行っています。海洋の活用・保全に係る科学技術の向上に資するため、海洋を巡る理学的・工学的・農学的・社会科学的・人文科学的諸科学を教授するとともに、これらに係わる諸技術の開発に必要な基礎的・応用的教育研究を行うことを理念に掲げています。

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