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講義No.09180

「なぜ処罰されるの?」 ~公共的な視点を養う刑事法学~

すべての悪い行いが処罰されるわけではない

 多くの人は、「悪いことをしたら処罰されるのが当たり前だ」と思っています。しかし、犯罪として処罰する時には、必ず根拠が必要です。そのため、犯罪になる行為は何か、刑罰の種類や程度と合わせて定めている法律が「刑法」です。殺人や傷害、窃盗などが処罰の対象となるのは、人にとって大事な利益を侵害する行為だからです。一方、誰かの利益を損なう恐れがないのであれば、たとえ悪い行いだとしても、処罰すべきではないと考えられています。

人の思想は処罰されるのか?

 例えば、人の思想は処罰されるでしょうか。この点については、反社会的なことをいくら考えても、考えるだけでは処罰の対象になりません。人が何を思っているかを確かめる術はなく、危険思想だと決めつけて取り締まる行為は、一部の人にとって不都合な人を排除することになりかねません。しかし殺人を計画して凶器を準備し、相手のもとへ向かっている、など具体的な行動を起こした場合は、誰かの利益を損なおうとしていることが明らかなので処罰できると法律で定められています。

常識を問い直す

 犯人に「責任能力」がないと判断されると、人をナイフで刺して死亡させたような場合でも、罪に問われません。刑法では、その人の「せい」だったといえない限り、犯罪が成立しないと考えられているからです。しかしこの刑法の原則は、しばしば実際の市民感情との間でズレが生じます。なぜ処罰されるのか、また処罰されないのかを考えれば、私たちの常識を問い直すことにつながるでしょう。
 刑罰は国家が国民に行使できる最も強力な権力です。だからこそ厳密な議論が必要で、いかに適正に行使できているか、吟味しなければなりません。また刑事法学では、心理学や社会学など経験科学の知見を踏まえた、学際的な研究も行われています。公共的な視点を養う意味でも、有意義な学問だといえます。

夢ナビライブ2019 東京会場

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法と倫理の関係

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犯罪の条件、処罰の正当性

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社会に有害なら犯罪にしてよいのか?

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講義を視聴する(30分)

この学問が向いているかも 刑事法学

一橋大学
法学部 法律学科 教授
本庄 武 先生

先生の著書
メッセージ

 高校時代は、受験勉強をするだけではなく、社会で今何が問題になっているのか、立ち止まって考える習慣をつけておくことがとても大事です。身の周りで起こっていることだけではなく、広く世の中で起きている事象に関心を持ちましょう。
 例えば新聞をきちんと読み、報道内容について自分なりの意見をしっかり持つようにしましょう。高校生のうちから「考える」練習をしておけば、大学に入って有意義な学生生活を送れます。また、刑事法学で身につく緻密な論理の組み立ては、将来どの分野に進んでも役に立つはずです。

先生の学問へのきっかけ

 大学は、法学部で犯罪や刑罰について扱う刑事法学を専攻しました。数ある法分野の中で刑事法学を選んだのは、犯罪という問題には感情的に反応してしまいやすいからこそ、理論的な根拠に基づいて冷静に分析する価値があると感じたからです。ニュースを見れば日々たくさんの事件が報道されています。この現実を前に、何が犯罪として処罰されるのか、一方で処罰されない場合があるのはなぜなのか、深く向き合うことはとても貴重な経験となります。新しい視点にハッとさせられるかもしれません。刑事法学は、公共的な視点を養う学問なのです。

先輩たちはどんな仕事に携わっているの?

法曹関係者/国家・地方公務員/製造業法務担当/金融機関 など

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本庄 武 先生がいらっしゃる
一橋大学に関心を持ったら

 一橋大学の大きな特色として、まず第1に挙げられるのは、我が国で最も伝統のある社会科学の総合大学として、常に学界をリードしてきたという長い歴史と実績、並びにこの伝統を受け継ぎ、人文科学を含む広い分野で、新しい問題領域の開拓と解明を推進する豊富な教授陣に恵まれていることです。第2は、商学部・経済学部・法学部・社会学部の垣根が低く、学生は各学部の開設科目を自由に履修することができます。また、10人から15人程度の少人数で行われているゼミナール制度(必修)を核とする少数精鋭教育も本学の特色のひとつです。

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