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講義No.08711

薬の研究開発は、効き方や副作用をコンピュータで解析・予測する時代に

世界中で蓄積されたデータを組み合わせて分析する

 開発途中の薬の効果を調べるというと、動物や人間に実際に投与して、その結果を分析するというイメージを持っている人が多いかもしれません。しかし、最近の薬の研究開発の現場では、世界中の医療機関や研究機関で蓄積されたデータを使って、コンピュータ中に患者さんを作りバーチャルな世界で分析する「モデリング・シミュレーション」という手法が取り入れられています。

薬の効果や、体内でどう運ばれるかを予測する

 モデリング・シミュレーションで分析するポイントには、大きく分けて2つあります。1つめは、「生体(患部のたんぱく質)に人工的に作成した有機化合物(薬の成分)がくっつくか、くっつかないか」です。2つめは、「薬が体内でどのように運ばれるか」という薬物動態です。
 薬は小腸の膜を透過し体内に吸収されると、肝臓へ運ばれ酵素で代謝・分解されます。肝臓で薬の成分が完全に分解されてしまうと、薬が全身の循環に回らず、患部に届きません。また、その人の持つ遺伝子の型(遺伝子多型という)によっては、効き方にばらつきがあるため、この個人差も開発段階でシミュレーションします。例えば日本人では、肝臓のある代謝酵素の数が少ない人の割合が高く、血中濃度が高くなりすぎて「副作用が出やすい」ということが起きます。これも動物や人間に投与される前に予測できるのです。

研究段階でも、臨床でも、薬剤師の役割が大きい

 今後、研究段階ではコンピュータによる解析がますます重要になってきますし、臨床の現場では、薬の飲み合わせや、その患者さんの酵素の多い少ないなどのデータにより、薬の投与量を決める時代が既にやってきています。
 「川上」に当たる薬の研究段階でも、「川下」になる薬を患者さんに投与する医療の臨床現場でも、高度な知識を備え、コンピュータを使いこなせる薬剤師の存在は欠かすことができないと言えるでしょう。

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この学問が向いているかも 薬学

横浜薬科大学
薬学部 薬科学科/臨床薬学科 教授
千葉 康司 先生

メッセージ

 医薬品の開発をする際、最も大切なのは「好奇心」、そして「世のため人のため」「人を幸せにしたい」という思いです。研究の原動力は好奇心だと思いますが、この好奇心に自分のエゴ(出世欲や自己顕示欲、不安など)がまとわりつくと、研究がうまく進まなかったり、途中で頓挫してしまいます。言うまでもなく医薬品を開発することは、病気などで困っている人を救ったり、世の中のため、人のためになる行為です。あなたには、「知りたい」「世のため人のためになりたい」という2つの思いを大切にし、勇気を持って挑戦してほしいと思います。

先生の学問へのきっかけ

 大学で研究をする前は、製薬メーカーで薬の研究・開発をしていました。薬の開発は国際的な枠組みで実施されます。特に臨床開発では、データは世界をすごいスピードで回ります。そして、その枠組みで働くためには、博士の学位が必要です。当時、日本の臨床開発の現場では学位を持たない人が多く、私はそうした仲間が研究室に通わなくても、コンピュータの中で新しい現象を発見し学位を取得するという道があると思い、その道を拓くために大学の教員に転身しました。コンピュータによる薬学に興味があったというのも大きな動機です。

先輩たちはどんな仕事に携わっているの?

病院・薬局薬剤師/製薬会社研究員/臨床開発者(ヒトでの薬の試験を計画解析する)/医薬品認可機関(PMDAなど)の審査員

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千葉 康司 先生がいらっしゃる
横浜薬科大学に関心を持ったら

 全国初の6年制薬科大学として開学した本学は、患者一人ひとりの苦しみを理解できる”惻隠の心”と”心の温かさ”を育てる教育を実践する。学長にはノーベル物理学賞を受賞した江崎玲於奈先生が就任。世界的な科学者の視点で個性教育を行うとともに、強く薬剤師を志す人の努力にはサポートを惜しまない風土が強みである。

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