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講義No.07701

神経系の病気克服をめざして ~生理学によるシナプスの研究~

シナプスは脳からきた指令の「変電所」

 人間が手足を動かすメカニズムは、まず脳から出た電気的な信号が、脊髄から伸びる運動神経を経てさまざまな筋肉へ指令を伝え、筋肉がその指令通り動くことで成り立っています。運動神経の細胞から筋肉の細胞には直接電気的信号が届くのではなく、両者の細胞のすき間にはシナプスという「変電所」のような部分があり、そこでは化学物質によって信号を伝えています。シナプス部分の神経細胞側から神経伝達物質とよばれる化学物質が出て、筋肉細胞側にある受容体(レセプター)というタンパク質がこれを受け取り、外部からの情報を伝える仕組みです。

にせの神経伝達物質でレセプターをだます?!

 シナプスは細胞間の信号伝達において重要な役割を果たしています。運動や記憶など目的によってそれぞれ異なるシナプスがあり、各シナプス内では特定の神経伝達物質をレセプターとやりとりしています。ところがほとんどのレセプターは、特定の神経伝達物質と似たような化学構造を持つ物質だと、本物と勘違いしてしまいます。この性質を応用してシナプスの働きを人為的に操る「にせの神経伝達物質」が、薬剤なのです。

麻酔やシワとり注射の原理はシナプスの操作

 運動神経系のシナプスの働きをシャットダウンする、にせの神経伝達物質を投与し、手術中に患者の筋肉が動かないようにするのが「麻酔」です。また、食中毒の原因となるボツリヌス菌から出るボツリヌストキシンという毒素は、シナプス内で神経伝達物質を放出させない働きを持っており、筋肉を動かなくして手足のまひを引き起こします。これを逆手に取り、顔のシワのある部分にボツリヌス菌を注射すると、その部分の神経伝達物質が放出されず筋肉が縮まなくなるため、シワが伸びる効果があります。これが美容外科で広く行われている「ボトックス注射」です。
 生理学におけるシナプスの研究で、神経系の病気で動かなくなった筋肉を再び動かす医療も可能な時代が来ようとしています。

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この学問が向いているかも 神経生理学、生理学

大阪医科大学
医学部 医学科 生命科学講座 生理学教室 教授
小野 富三人 先生

メッセージ

 「生理学」は医学の基礎でもあり、生きている個体内で内臓や筋肉、脳、神経などがどうやって動き、どんな働きをしているかを研究する学問です。生理学ではよく「ゼブラフィッシュ」という、体が透明で内部器官の動きが目で見える小さな魚を使い、研究や実験を行っています。研究の結果、脳から体の各器官へ信号を送る神経系統の細胞や分子レベルでは何が起こっているか、徐々にわかってきています。興味がわいてきたら、ぜひ一緒に最新の生理学を学びましょう。

先生の学問へのきっかけ

 高校生の時、「絶対に大学は医学部へ行くんだ!」と決めていたわけではなかったのですが、漠然と研究者に興味があったため、研究者になる選択肢のひとつとして医学部を選びました。
 大学院で研究を重ねるうちに、医師でありながら研究者であることは、一度に何十万、何百万という多くの人を研究成果によって救えるかもしれないと気づき、とても大きな目標を持つようになりました。そして、17年間アメリカの大学で研究を続け、海外で得たたくさんのものを日本の学生にもぜひ伝えたいと思い、日本に戻ってきました。

先輩たちはどんな仕事に携わっているの?

大学教員/製薬会社研究員/研究所研究員

大学アイコン
小野 富三人 先生がいらっしゃる
大阪医科大学に関心を持ったら

 大阪医科大学は1927年の創立以来、「高度な医療職業人の育成」を標榜し、現在までにおよそ9,000名もの医師を輩出してきました。平成22年春に新たに看護学部を開設し医学部生と看護学部生がともに学べる学習環境を確立し、「医看融合教育」を実現。
 現代のチーム医療における医師、そして看護職者としての役割を学生時代から強く意識できる恵まれた医療教育の環境の中、社会に貢献できる高度医療人を育成します。

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