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講義No.07626

医薬品の開発のカギを握る「触媒」とは?

分子のキラリティーとは?

 有機化合物は炭素どうしが連続的に複雑に繋がった構造を取っており、非常に立体に富んでいます。特に1つの炭素原子に4つの異なる部分構造が結合した不斉炭素原子をもつ化合物には、右手型と左手型の区別(キラリティー)が存在します。右手型と左手型は色や融点などの性質は全く同一ですが、臭いや味などの生命に対する反応は異なっています。

医薬品分子の立体が医薬品の活性を決める

 医薬品の有効成分とされる物質のうちのほとんどは有機化合物ですが、医薬品の中にはキラリティーを有するものがあり、複数の不斉炭素原子を含んでいるものも多数みられます。
 私たちの体の中で存在している酵素や受容体と呼ばれる部分は、この有機化合物の立体構造の微妙な違いを精密に認識することができます。受容体は鍵と鍵穴のようにぴったりとはまり込む立体構造を持った分子にのみ応答を示します。酵素は薬物を効果のあるフォームに変換したり、逆に薬物を無効化したり、排出されやすい構造に変換したりなどさまざまな作用を行います。

医薬品開発における触媒の役割とは?

 複雑な構造をした有機化合物は、石油や天然物を由来とした簡単な構造の化合物から何工程もの化学変換を経て人工的に合成されます。その合成ステップ数はより少なく、各反応の時間も短くした方が効率的です。医薬品の生成を効率化して大量生産できると、価格も安くでき需要に応えることができます。合成の過程を効率化するために大きな役割を果たすのが「触媒」です。触媒は化学反応を加速するだけではなく、生成物のキラリティーなどの立体構造を作り分ける能力を持たせることもできます。触媒は構造が少し違うだけで活性がかなり違ってきますので、どの構造のとき最も期待する効果が得られるか、調べながら触媒を設計していきます。触媒はハサミのようなものです。普通紙を切るためのハサミでダンボールやティッシュを切ると切りにくく、それぞれに合ったハサミが必要なように、それぞれの反応に対して最適な触媒があるのです。

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この学問が向いているかも 有機化学

高崎健康福祉大学
薬学部 薬学科 教授
山際 教之 先生

メッセージ

 高校で習う化学は、薬学はもちろん、理工学、農学、繊維などさまざまな分野で求められる知識の基本となっています。私自身、高校時代は化学がとても好きで、授業で使わないところまで周期表を覚えていたほどでした。私が現在研究している有機化学反応は、医薬品などに含まれる化学物質を人工的に合成する上で欠かせないものですが、その考え方は高校で学ぶ有機化学が基本になっていますので、大学で専門的に学ぶ前にしっかりと身につけてきてください。

先生の学問へのきっかけ

 「有機化学」の中でも「触媒」を主に研究しています。高校時代から化学が得意でしたが、大学院で専門的に化学反応の研究をする際に、フラスコに触媒を入れると入れないとでは、化学反応のスピードや得られる生成物の構造が全然違うということに驚き、触媒が作用する仕組みについて興味を持ちました。なぜこんな小さな分子が化学反応に大きな影響を与えるのか、その仕組みを調べてみたいと思ったのです。触媒とは何かを作るためのもの、同じ何かを作るなら、人のためになるものを作りたい、そんな思いで研究者になりました。

先輩たちはどんな仕事に携わっているの?

ドラッグストア薬剤師/薬局薬剤師/病院薬剤師/製薬会社MR

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