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講義No.07078

「時計遺伝子」の機能を用いた、新しいがん治療の可能性

生物はリズムに従って生命活動を営んでいる

 約24時間で変動する生理現象を概日(がいじつ)リズムと言います。体内時計や生物時計と同じ意味です。概日リズムが、睡眠や覚醒、ホルモン分泌などの生理活動を制御しており、リズムの乱れが体調不良を引き起こし、生活習慣病の誘因とも考えられています。この概日リズムをコントロールする遺伝子群が時計遺伝子です。朝になると起きて昼の間は活動し、夜になると眠るというリズムは、習慣がそうさせているのではなく、長い歴史の中で構築された遺伝子によって規定されているのです。

傷は治すが、がんを成長させてしまう血管新生

 体の傷を放っておくと血が止まってかさぶたができ、いつの間にかかさぶたが取れて治っていた、という経験があると思います。これを「創傷治癒」と言います。このとき傷の部分には「血管新生(新たに血管を形成する現象)」に関わる遺伝子(VEGF)によってたくさんの血管ができ、栄養と酸素を送って傷を自然に修復していきます。体内でも同じような現象が起きますが、限られた場所で必要なときにしか生じません。つまり、むやみに血管ができないような制御機能が働いているのです。
 この制御機能が働かないのが、がんです。がんもこの仕組みを使って血管を作りますが、がんの血管新生は制御不能で、VEGF遺伝子が栄養を集めるために血管をどんどん形成し、がんを成長させてしまうのです。

時計遺伝子を介して、がん細胞の増殖を制御する

 近年の研究により、VEGF遺伝子の発現がDECという時計遺伝子の働きによって24時間周期でリズミカルに変動することが明らかになってきました。がんが成長するための血管新生はいつも一定レベルで行われているのではなく、時間帯によって発現量に差が生じることがわかってきたのです。概日リズムとVEGF遺伝子発現の相関を明らかにして活用できれば、最適なタイミングでの投薬も可能になり、より有効的ながん治療につながることが期待されています。

夢ナビライブ2019 東京会場

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この学問が向いているかも 腫瘍医学、がん医療

弘前大学
医学部 医学科 教授
鬼島 宏 先生

メッセージ

 病気を治すことは当然ですが、病気で苦しんでいる患者さんに対して、やさしく、親身に接することが求められるのが医療の現場です。そのためには自らの心身が健全に保たれていなくてはなりません。
 高校時代は社会に出る前段階として、とても大切な時期です。スポーツなどで体を鍛え、友だち付き合いや読書で心を豊かにして、自分で自分の体調管理ができるようになることが重要です。うまくストレスを発散しながら、勉学に励んでください。大学に入ってからの勉強に、覚悟を持って挑んでくれることを望んでいます。

先生の学問へのきっかけ

 病気を治すためには、病気のメカニズムを明らかにすることが大切であることを知り、医療の道へ進みました。そして、がんで苦しむ患者さんを助けたいと30年にわたりがんの研究を続けてきました。生活リズムが不規則な人ほど、がんや心筋梗塞などの病気にかかりやすいというデータから、体内時計とがん発症の科学的な関連性に着目し、研究を続けています。日本人の死亡原因の1位ががんという時代ですが、「誰もが体内のどこかに持っている腫瘍が悪性化し、臨床的ながんにならないように制御する方法はあるのではないか」と考えています。

先輩たちはどんな仕事に携わっているの?

医師/医学研究者(医学科在学中は、すべての科(内科・外科・小児科・産婦人科・精神科など)を学ぶため、卒業後はいずれの科にも進むことができます。)

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鬼島 宏 先生がいらっしゃる
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 弘前大学は、人文社会科学部、教育学部、医学部、理工学部および農学生命科学部の5学部からなる総合大学で、すべての学問の基礎的領域をカバーしています。
 この総合大学という特性を生かして、本学では教養教育と専門基礎教育を重視した教育を行い、これからの社会に対応できる人材を育成することを目的としています。
 本学の学生は、歴史と伝統のある文化の香り高い弘前市で学びながら、地域の自治体や企業などと連携し、さまざまな活動に積極的に参加しています。

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