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講義No.06912

魚の免疫機能の研究がもたらす、人間の病気治療への希望の光

実は似ている? 魚と人間

 魚と人間では姿形は違いますが、動物全体を見渡してみると、案外近い関係にあります。動物全体のわずか3%ほどの脊椎動物のグループに、魚も人間も入っているのです。背骨があるだけでなく、顎(あご)を持つという点でも共通しています。また人間のゲノム(全遺伝情報)には、2万から3万の遺伝子が入っていますが、魚もほぼ同じくらいの数の遺伝子を持っています。

2つの免疫システムで体を守る

 動物には、病原体など外敵を攻撃し、身を守る「免疫」の仕組みが備わっています。魚も人も、免疫にかかわるよく似た遺伝子を持つことがわかりました。免疫には、生まれつき備わる「自然免疫」と、病原体を学習することで後天的に身につける「獲得免疫」があります。獲得免疫とは、ひとたび病原体を学習・記憶すると、「抗体」を作ることができるようになり、以降は病原体に抗体を結合させて効率的に撃退できるようになるというものです。自然免疫はすべての動物が持っていますが、獲得免疫も併せ持つのは、魚類や両生類、鳥類、哺乳類など脊椎動物の限られたグループだけです。

魚の免疫の驚くべき力

 獲得免疫に関する遺伝子に異常があると、抗体を作ることはできません。人間の場合、獲得免疫に大きく依存しているため、その遺伝子がないと感染症にかかりやすくなり、生きていくことは困難です。ところが驚くべきことに、魚は獲得免疫に関する遺伝子を失っても、自然界で生きることができます。魚には自然免疫だけで人間よりもうまく病原体を撃退する仕組みがあるのではないかと考えられています。
 近年、同じように見えても、魚と人間の遺伝子では異なる働きを持つことが明らかになってきました。人間は進化の過程で、このような自然免疫の力を失ってしまったのでしょうか? 魚の免疫の仕組みを解明すれば、養殖での感染症を防げるばかりか、人間の病気の治療にも光が差すでしょう。免疫を知る上で、魚から学ぶことは多くあるのです。


免疫系の成り立ちを魚から学ぶ

この学問が向いているかも 比較免疫学

九州大学
農学部 生物資源環境学科 教授
中尾 実樹 先生

メッセージ

 私の専門の「比較免疫学」は、種を比較することによって、免疫共通の仕組みや特殊性を考える分野です。
 研究とは、疑問をとことん探究することです。「就職に有利」という理由で進路を選ぶ人がいるかもしれませんが、そうして進んでも、いずれ壁にぶつかる時期がやってきます。そのとき乗り越える最も大きな力は、「そのことがどれだけ好きか」ということです。学問には、多様な角度から疑問を探る面白さがありますから、たとえ小さなことでも、あなたが「好き」と感じる分野に出会ったなら、ぜひ迷わずその道に進んでみてください。

先生の学問へのきっかけ

 高校3年生の夏までは、大学では電子工学へ進もうと考えていましたが、ある夏の日、田んぼの真ん中にあった高校の廊下から、風に揺れる稲の波を眺めていて突然「いや、生物が面白い」と志望を大きく変えました。
 魚釣りも趣味だったので、生物なら魚について勉強したいと思い、水産学を学べる九州大学農学部に入学しました。当初は、海や川の環境・生態系に高い問題意識を持っていましたが、卒論研究を選ぶ時に「水産学」と「免疫学」という一見ミスマッチな学問の未知なる面白さに惹かれてしまい、魚類の免疫系を研究し始めました。

大学アイコン
中尾 実樹 先生がいらっしゃる
九州大学に関心を持ったら

 九州大学は、教育においては、世界の人々から支持される高等教育を推進し、広く世界において指導的な役割を果たし活躍する人材を輩出し、世界の発展に貢献することを目指しています。また、研究においては、人類が長きにわたって遂行してきた真理探求とそこに結実した人間的叡知を尊び、これを将来に伝えていきます。さらに、諸々の学問における伝統を基盤として新しい展望を開き、世界に誇り得る先進的な知的成果を産み出してゆくことを自らの使命として定めています。

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