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講義No.05116

放射線の通り道を目に見える形にする

プラスチックを使って、放射能を測る

 放射線は目に見えませんが、その量や種類を測ることはできます。近年、あらためて注目されているのはプラスチックを使った検出器です。放射線とは、「原子をイオン化するエネルギーの粒」です。イオンが飛んできたら、それがプラスチックを通過するようにし、その後、そのプラスチックを化学処理すると、イオンの通り道に沿って、全体にかすかな傷が残ります。それをエッチングという、表面を少し削るような作業をすると、道が拡大されていきます。元の道は見えませんが、拡大しているので、光学顕微鏡で見ることができるのです。イオンの通り道は、「エッチピット」と呼ばれる数μ(マイクロ)程度の小さな穴です。この穴を分析すると、イオンの種類と大きさがわかるのです。

アポロ宇宙飛行士のヘルメットの穴

 この研究のきっかけは、1960年代のアポロ宇宙飛行士です。彼らのかぶっていたヘルメットは、当時開発されたばかりのポリカーボネートという、耐熱性・耐摩耗性などにすぐれたエンジニアリングプラスチックの一種でした。これを化学処理するとたくさんの穴が見えました。それが鉄や亜鉛によるものだとわかったことから、この方法が使えると実証されたのです。
 記録しやすいプラスチックのひとつに、「ポリ・アリル・ジグリコール・カーボネート」があります。第二次大戦前から作られていたもので、元はメガネのレンズの材料にもなっています。宇宙飛行士はこれを胸につけ、被ばくの線量を測ります。イオンの放射線は地球では少ないですが、宇宙には多く飛んでいるので測定は大切です。

将来性が期待される検出器

 通常、放射線を測るのには、大きな装置と電源、1000ボルトぐらいの高い電圧などの用意が必要です。それで、電離現象をシグナルに変えるのです。これに比べ、プラスチックを使った検出器のよさは、放射線にあてるだけでいいというその手軽さと利便性です。放射線を使う医療現場でも、この検出器は活用できますので、今後の研究が期待されます。


この学問が向いているかも 物理学

神戸大学
海事科学部 海洋安全システム科学科 教授
山内 知也 先生

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メッセージ

 私は、特殊なプラスチックを用いて放射線を測る研究をしています。イオンの通り道にプラスチックを置いておき、それを分析すると、放射線の種類がすべてわかります。そのプラスチックは、宇宙飛行士が宇宙ステーションに滞在するときにも持って行って使われます。さらに普通の検出器では測れない非常に強いレーザー駆動イオン加速実験などといった場合でも使われます。高校時代に物理学をしっかり勉強して、あなたもぜひ神戸大学へ来てください。

先生の学問へのきっかけ

 放射線という目に見えないものを計測する検出器の研究をしています。プラスチックを使い、顕微鏡でのぞくという手法で、はじめた頃は正直なところ、日本ではあまり注目されませんでした。まわりの人からは「泥沼にはまるからやめた方がいい」とまで言われたのです。ところが、フランスでの学会発表で注目を集め、それが縁でヨーロッパの研究者と交流を深めるようになりました。自分の道を信じてコツコツ努力を重ねることが大切なのです。

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