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講義No.11457

「植物」のシミュレーションで、未来の気候変動を予測

葉っぱが気候を変える?

 植物は気候に大きな影響を与えています。例えば森林を切り開いて畑を作ると、空気が乾燥しやすくなります。通常の森林では、葉の総面積は地面の面積に比べ約7倍も存在します。一方畑の場合、葉の面積は地面の3倍にすぎません。その結果葉から蒸発する水分量が減り、空気が乾燥してしまうのです。また、吸収できるCO2の量も減るため、温暖化が促進されます。広範囲で同様のことが起これば、世界の気候を変化させます。

CO2吸収量予測の手掛かり「クロロフィル蛍光」

 将来的な気候変動を予測するヒントのひとつが、大気からCO2を吸収する光合成の速度です。そこで植物が光合成をするときに発する「クロロフィル蛍光」をリアルタイムで観察し、光合成スピードを測定する技術が研究されています。葉は曇りの日であれば、吸収した太陽光エネルギーをすべて光合成に利用可能です。しかし晴れて日差しが強いと、葉の中で太陽光エネルギーが余ってしまいます。すると葉は残ったエネルギーを外に逃がそうと赤いクロロフィル蛍光を放出するのです。クロロフィル蛍光は太陽光が強すぎて肉眼では見えませんが、赤色の光を放っていて、宇宙からも計測できます。地上での観測データと人工衛星から送られてくる情報を利用し、光合成速度や気候変動を予測するコンピュータシミュレーションモデルの作成が行われています。

相手は自然だけではない

 地球の陸地は約3分の1が農地なので、自然の生態系だけを対象にしていては気候変動を正確に予測できません。そこで作物の収穫量などを世界規模でモデリングする研究も行われています。モデリングでは大気汚染やオゾン濃度なども考慮しなければなりません。例えば工業都市で濃度が高くなるオゾンは植物の光合成にも影響を与えます。オゾンを大量に浴び続けた植物は気孔を一部閉じてしまうからです。将来どの程度気孔が閉じられてしまうのか、その結果、気候にはどの程度影響するのかなどのシミュレーションも行われています。


この学問が向いているかも 植物生態学、気象学

北海道大学
農学部 農学研究院 連携研究部門 連携推進分野 准教授
加藤 知道 先生

先生がめざすSDGs
メッセージ

 気象と植物のシミュレーションを同時にすると、将来森林がどのくらい大きくなって気象がどのくらい変わるのかなど、自然現象を論理的に説明できます。この物理と生物の間を取り持つ、懸け橋となる研究に興味を持ってもらえるとうれしいです。
 物理や化学のように確立した法則は生態学にはほとんどありません。実験や観測の結果とつじつまの合う式を自分で組み立て、現象の再現に成功したときは、あたかも神様になった気分になれると思います。作ったモデルが世界で利用されるために、国際学術雑誌への論文投稿にも積極的に挑戦してほしいです。

先生の学問へのきっかけ

 私が小学生の頃の1980年代は環境問題が世間に知れ渡り始めた時期です。温暖化などもよくテレビで取り上げられていたため関心を持ち、自然や気象、物理などを学びたいと思いました。生物、農学、物理、理学などが結びついた農業気象学を知ったのは大学に入ってからです。作物の収量や自然災害などを調べる研究室に所属したことを機に、陸域生態系やモデリングといったテーマにたどり着きました。農学部の研究は地域密着型のイメージが強いですが、グローバルな研究にもつながるため魅力を感じています。

先輩たちはどんな仕事に携わっているの?

大学教員/国立研究所職員/官公庁環境政策/官公庁農業政策/環境コンサルタント会社技術職/民間気象サービス会社技術職/商社農業マーケティング/保険会社自然災害リスクマネジメント/商社宇宙事業/建設会社アグリビジネス

大学アイコン
加藤 知道 先生がいらっしゃる
北海道大学に関心を持ったら

 北海道大学は、学士号を授与する日本最初の大学である札幌農学校として1876年に創設されました。初代教頭のクラーク博士が札幌を去る際に学生に残した、「Boys, be ambitious!」は、日本の若者によく知られた言葉で本学のモットーでもあります。また、140余年の歴史の中で教育研究の理念として、「フロンティア精神」、「国際性の涵養」、「全人教育」、「実学の重視」を掲げ、現在、国際的な教育研究の拠点を目指して教職員・学生が一丸となって努力しています。

※夢ナビ講義はそれぞれの先生の見解にもとづく講義内容としてご理解ください。

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