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講義No.11432

作品の履歴をあぶり出す保存修復技術

美術作品の保存修復

 美術作品は、古いものであるほどアーティスト(画家や彫刻家)が制作したままの状態では残っていません。ほとんどになんらかの保存修復の手が入っています。つまり美術作品は「歴史」の積み重ねでできており、保存修復は、こうした歴史を読み解く調査から始まります。X線や赤外線などの科学的な手法を用いて、何層にもわたる内部の情報を読み取ることも行われます。絵画なら、画布に塗られた絵具の下の層から、描きかけた絵を塗りつぶした痕跡が読み取れたこともあります。構図に悩んで試行錯誤したのか、新しい画布を購入する余裕がなかったのか。画家の性格や制作の背景までもが浮かび上がります。

将来を見据えた保存修復

 作品の完成後に重ねられた絵具からは、受け継がれる過程で行われた修復の跡も分析できます。多くの人が作品を保存しようと心を砕き、時に修復を加えたことで、作品は私たちの元にたどり着いたわけです。作品をみるとき、アーティスト一人が描いたものとしてだけでなく、修復を含めた歴史的な痕跡を読み解くことで、遍歴があぶり出されてくるのです。スペインでは、大胆な描き変えによって貴重な宗教画がオリジナルとはまったく違うものに修復される事件がありました。保存修復は作品の外観や構造を変えてしまう危険性をはらみます。また修復の考え方も技術も進歩していくため、将来はもっと良い修復方法が生まれる可能性もあります。後から取り除くことができ、作品に最低限のストレスしか与えない修復方法を選ぶことが大切です。

消えるものを保存する

 保存修復は、古いものにだけ求められる仕事ではありません。展示空間を含め作品化する「インスタレーション」をはじめ、新しい素材や考え方が応用される現代美術にも必要です。なかには展示後に消滅するような作品もあります。物理的に保存不可能な作品について「そこに確かに芸術作品が存在した」と情報を保存し、記録するにはどうすればよいのか。現代美術の保存修復分野では、技術だけでなく、考え方そのものを新たに作り出す必要があります。


この学問が向いているかも 芸術学

東海大学
教養学部 芸術学科 講師
田口 かおり 先生

先生がめざすSDGs
メッセージ

 美術館や博物館は、新しい発見や喜びに満ちた宝箱のような場所。いずれの館も、工夫を凝らして展覧会を行っています。芸術はどこか難しく思える、よくわからない、と感じても大丈夫。たとえば音楽を聴くときのように、リラックスして会場を歩いてみましょう。ふと耳にした音楽に心が沸きたつことがありますよね。同じように、美術作品も自分とフィーリングが合うものを探してみれば良いのです。「好きになれるもの」がきっと見つかるはずです。

先生の学問へのきっかけ

 10代の頃、旅行先のイタリアで天高くそびえる大聖堂を目にし、こんなに素晴らしいものが現代まで残っているということに衝撃を受けました。過去から現在までの時の流れのなかで、さまざまな努力によって芸術作品が未来に残されていくことを知り、美しく歴史あるものを残し続けていく仕事に就きたいと考えました。それをきっかけに、絵画や彫刻がどうやって残されているかを調べ、大学1年の夏にはイタリアの絵画修復工房で修業。大学卒業後に、保存修復を専門的に学べる学校に留学して資格を取得しました。

先輩たちはどんな仕事に携わっているの?

広告業界/小売業/教員など

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田口 かおり 先生がいらっしゃる
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 東海大学は、全国のキャンパス(湘南・代々木・高輪・清水・伊勢原・熊本・阿蘇・札幌)に19学部75学科・専攻・課程を擁する総合大学です。「文理融合」の教育理念のもと、副専攻制度として、主専攻はもちろん主専攻以外の興味のある分野についても自由に学べるカリキュラムを用意しております。
 文系・理系の枠にとらわれない教育によって、柔軟な思考力とバランスのとれた総合力を身につけます。

※夢ナビ講義はそれぞれの先生の見解にもとづく講義内容としてご理解ください。

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