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講義No.11325

震災後にアワビが激減したのはなぜ? 水産資源の生態を探る

持続的な水産業のために

 水産業は、養殖を除いて、自然の生態系から直接生き物を捕獲する産業です。そのため無計画に水産資源を獲り続けると、生態系のバランスが崩れる可能性があります。持続的に水産資源を利用するため、ターゲットとなる生き物の生態や水産資源を上手に利用する方法、海の環境整備など、さまざまな視点から研究が行われ、その成果が社会に活用されています。

アワビの数はなぜ減った?

 水産資源は、生態が謎に包まれているために思いがけないタイミングで数を減らしてしまうことがあります。例えば、アワビはリアス式海岸の岩手県を代表する水産資源ですが、東日本大震災後に大きく数が減ってしまいました。調べてみると、震災後に自然発生で生まれたアワビはほとんどおらず、残っているのは震災前に生まれた10歳以上の個体が大部分でした。アワビは生まれてから5~6年で漁獲され始めますが、順次新しく生まれた個体が大きくなることによって資源が維持されます。しかし、震災後はこのサイクルがうまく機能していないため、アワビの数が減ったとみられます。アワビが生まれなくなった理由は、津波で一部の資源が失われるなど、海の環境が大きく変わったことが一因だと考えられていますが、詳しい因果関係は分かっておらず、まだ研究中です。

生まれた環境で左右される生存率

 アワビは生まれた年の水温によって生存率が左右されることがわかっています。生息しやすい水温の年に生まれた個体は多く生き残り、冬の水温が極端に低下すると数が減るなど、生まれ年ごとの資源の量は水温の変化に結びついているとの説が一般的とされてきました。しかし東日本大震災後の岩手県沿岸部では、水温に対応した生息数の変化はあまり見られません。震災後3年間分のサンプルを集め、殻を割って過去の成長履歴を調べた結果、今生き残っているアワビの資源は必ずしもこの関係だけではないことが分かってきました。震災後の海洋環境との関係を詳細に分析することで、アワビの生態や環境との因果関係がより明らかになると期待されます。


この学問が向いているかも 水産学

岩手大学
農学部 食料生産環境学科 水産システム学コース 教授
後藤 友明 先生

先生がめざすSDGs
メッセージ

 水産業を知ると、海や海洋生物と産業を自分の生活と結び付けて俯瞰(ふかん)的な目で見ることができると思います。海の環境や、水中で繰り広げられている豊かな生態系があなたの食卓にもつながっていることに、興味を持ってもらえるとうれしいです。
 水産分野を学びたいのであれば、まずは海に関心を持つことです。海や生物、日常生活で食べる魚など、どのような視点でもいいので注目してみると、関連のあるニュースや研究をチェックしたくなるはずです。海と水産業を知り、学びたいと思う人が1人でも増えることを願っています。

先生の学問へのきっかけ

 海の生き物が好きで、大学や大学院ではサメの分類学について取り組みました。主テーマの水産資源学に興味を持ったのは岩手県職員として水産資源管理の試験研究に携わってからです。元々魚を食べることも好きでしたが、地元の漁師さんたちと仲よくなり、日常的にかかわるうちに、見えない海の中の水産資源の生態や資源を可視化し、持続的な漁業の実現に向けた研究をしたいと思いました。
 現在の研究テーマは三陸の沿岸域を主なフィールドとした生態学と水産資源学です。生物自体や漁業を行う人など複数の視点で考えることを大切にしています。

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後藤 友明 先生がいらっしゃる
岩手大学に関心を持ったら

 国公私立大 合同進学オンラインイベント「夢ナビライブ2021Web in Autumn」に、後藤 友明 先生が参加! 先生の講義ライブ動画を10月12日(火)までオンデマンド配信するほか、Zoomで先生に直接質問ができる「講義ライブ質問対応・研究室訪問」を10月2日(土)に実施。夢ナビライブは、600名以上の大学教授や200近い大学がさまざまなプログラムを実施する大型オンラインイベントなので、まずは「夢ナビライブ」で検索してください。

※夢ナビ講義はそれぞれの先生の見解にもとづく講義内容としてご理解ください。

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