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講義No.11305

三島由紀夫の生涯を作品に閉じ込めた「最後の一行の日付」

小説家、三島由紀夫

 昭和の日本を代表する作家、三島由紀夫の作品はノーベル文学賞候補に何度も選ばれ、没後50年以上が経過した現在も書店に多くの作品が並んでいます。特に四部作を通して主人公が生まれ変わる『豊饒の海』は、今流行している「異世界転生もの」の先駆けともいえる画期的な作品です。圧倒的な筆致で多くの読者を魅了し続ける三島作品ですが、同時に「毒」に満ちている点も特徴です。人生の無意味さや人間の救いようのない面を描き、読者に絶望を突き付けますが、そのうえで何かを見出そうとする人の姿を描きだします。

時代に向き合い続ける

 精力的な執筆活動の傍ら、三島はテレビや雑誌に頻繁に登場して、テレビタレントのような人気を集めました。しかし一方では戦後民主主義のあり方を一貫して批判し、昭和45年11月25日にクーデターを企てた後、割腹自殺を遂げます。三島が生きた昭和の日本は、一時は世界の列強に肩を並べながらも、太平洋戦争に敗れ、連合国の占領を受けました。しかし戦後は見事な復興を果たし、世界二位の経済大国へと昇りつめます。ジェットコースターのような激しい時代の変化によって、人々の価値観が大きく分断された時期ですが、三島はその分断を安易に受け入れることなく、生涯を通して向き合い続けたのです。

作品と作家の生涯

 文学研究においては、作品と作家の生涯は切り離して考えられます。常に変わることがない作品(テキスト)に対して、作家の生涯には不確定要素が多く、研究材料になりにくいからです。しかし、ごく稀に、作品と生涯をつなげて考えることで、より本質に迫ることができる作家がいて、三島はその代表的な存在です。遺作となった『豊饒の海』の第四巻『天人五衰』は、「昭和45年11月25日」という日付で終わりますが、これは三島が作品を書き上げた後、自ら命を絶った日です。たった一行の日付を最後に加えることで、自らの「生死」と作品をつなげた三島由紀夫は、今も文学研究のあり方を揺さぶり続けています。


この学問が向いているかも 文学、現代日本文学

東海大学
文化社会学部 文芸創作学科 教授
三輪 太郎 先生

先生がめざすSDGs
メッセージ

 現代は「ショートカットの時代」だと感じています。将来の道を早く決め、最も効率的かつ低コストでそれを実現することが、正しい生き方であるように語られています。しかし、そのような無駄の一切ない生き方に、私は大きな違和感を覚えます。
 時代は常に変化し、今社会で求められていることが将来もそうであるとは限りません。むしろ一見無駄で、無意味に思えることが、役立つこともあり得るのです。ですから、今の価値観だけで判断するのではなく、若いうちにこそ「無駄」なことを大いに経験してほしいと思います。

先生の学問へのきっかけ

 中学生になって自意識が芽生え「自分は何のために生きているのか」といったことを考えるようになり、小説や哲学書を読み漁りました。どの本にも納得のいく答えは記されていませんでしたが、唯一その作品と生き方の両方で答えを示してくれたのが、三島由紀夫でした。大学時代には全作品を読破し、卒業後は雑誌編集の仕事の傍ら、三島の批評や論文を書きました。現在は、編集者時代に培った文芸創作や批評といった視点を交えながら、学術分野では語られにくい三島作品の本質を明らかにしようとしています。

先輩たちはどんな仕事に携わっているの?

編集者/アニメ制作会社プロデューサー/教諭(高校)/市役所職員/システム・エンジニア

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三輪 太郎 先生がいらっしゃる
東海大学に関心を持ったら

 国公私立大 合同進学オンラインイベント「夢ナビライブ2021Web in Autumn」に、三輪 太郎 先生が参加! 先生の講義ライブ動画を10月31日(日)までオンデマンド配信するほか、Zoomで先生に直接質問ができる「講義ライブ質問対応・研究室訪問」を10月2日(土)・3日(日)に実施。夢ナビライブは、600名以上の大学教授や200近い大学がさまざまなプログラムを実施する大型オンラインイベントなので、まずは「夢ナビライブ」で検索してください。

※夢ナビ講義はそれぞれの先生の見解にもとづく講義内容としてご理解ください。

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