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講義No.11261

『美女と野獣』が書かれた目的は? おとぎ話に潜むジェンダー

おとぎ話とジェンダー不平等

 文学の世界には、出版当初は問題視されていなかったものの、社会の変化とともに差別的な表現だと評価が改められてきた作品があります。特に1970年代以降、ジェンダー不平等の観点から物語を語り直す試みが行われてきました。例えば『美女と野獣』です。18世紀後半にこのおとぎ話を童話として再構築したボーモン夫人は、イギリス中産階級の家庭教師をしていました。この頃は、中産階級の人々が地位を高めるために娘を貴族に嫁がせた事例は数多く存在します。ボーモン夫人はそんな娘たちに結婚への心構えを示そうとしたのです。

『美女と野獣』の教訓

 『美女と野獣』は主人公のベルが父親のために意に添わぬ醜い野獣との結婚を迫られ、当初は嫌がっていたものの、やがて恋に落ち最後には野獣が王子に変身して幸せになる物語です。作中にはベルの姉たちも登場しますが、こちらは自ら決めた見目麗しい男性と結婚して悲惨な末路をたどってしまいます。こうした対比から、父親のために、たとえ相手が醜くとも結婚することが結局は身分の上昇と経済的安定という幸せにつながると説いたのです。

語り直しで価値観を問う

 そして、1979年にイギリスの女性作家のアンジェラ・カーターは、ジェンダーに注目して『美女と野獣』を語り直しました。作中の野獣は人間ではなく、本物の動物です。ベルは初めこそ野獣を嫌っていますが、やがて野獣が人間よりもずっと尊敬できることに気づきます。また動物も女性も世の中で差別されてきたことに気づき、最後は自分が野獣に変身することを選びます。経済的な成功だけが女性の幸せではないのだと、カーターは伝えようとしました。
 カーター自身も、女性であることを理由に社会で抑圧されてきた経験があります。しかし、日本で二年間暮らす中で、自分が白人として抑圧する側に立つ場面も、女性として抑圧される場面もあるのだと気づいたのです。その後、おとぎ話の語り直しや、既存の価値観を問い直すような作品作りに取り組んでいきました。


この学問が向いているかも 外国文学、ジェンダー研究

国際基督教大学(ICU)
教養学部 アーツ・サイエンス学科 教授
生駒 夏美 先生

先生がめざすSDGs
メッセージ

 日本は男女不平等の度合いを示すジェンダーギャップ指数が低く、性を理由に生きづらさを抱えている人も多いかもしれません。しかし、世界にはジェンダーやセクシュアリティに対する多様な価値観があります。
 世界に視野を広げるとき、身近な入り口となってくれる一つが外国文学だと思います。文学に触れるとき、作品を楽しむだけでなく、書かれたときの社会背景や作者の想いなどにも目を向けてみましょう。作品に込められたメッセージは何か、あなたなりに考えて深く読んでみてください。新たな考え方が見えてくるかもしれません。

先生の学問へのきっかけ

 小さいころから本が好きで、特に外国文学がお気に入りでした。大学時代の研究テーマは女性作家の作品のフェミニスト分析です。1990年代の日本ではまだあまり研究が行われていない分野だったため、進学する大学院選びに苦労しました。その後イギリスに留学し、精神分析や自伝の読解方法など、文学を読むうえで役立つ理論などを知りました。すると読むことの政治性がわかり、理論を使って文学を読むことの快感を知りました。現地の女性教員の多さにも衝撃を受け、私が学んだことを日本でも教えたいと思い大学教員になりました。

先輩たちはどんな仕事に携わっているの?

大学教員/ NPO法人/国際機関など

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生駒 夏美 先生がいらっしゃる
国際基督教大学(ICU)に関心を持ったら

 国公私立大 合同進学オンラインイベント「夢ナビライブ2021Web in Autumn」に、生駒 夏美 先生が参加! 先生の講義ライブ動画を10月31日(日)までオンデマンド配信するほか、Zoomで先生に直接質問ができる「講義ライブ質問対応・研究室訪問」を10月3日(日)に実施。夢ナビライブは、600名以上の大学教授や200近い大学がさまざまなプログラムを実施する大型オンラインイベントなので、まずは「夢ナビライブ」で検索してください。

※夢ナビ講義はそれぞれの先生の見解にもとづく講義内容としてご理解ください。

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