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講義No.11135

動物の栄養状態は、誕生時や授乳期の「初期栄養」で決まる!

恒久的に続く生まれ持った栄養状態

 動物栄養学には、栄養で動物の能力を引き出し、強い形質を獲得させる「初期栄養」について研究する分野があります。動物は親の栄養状態に対する適応を生まれるまで、あるいは授乳期間に母親から受け継ぎ、一生この体質を保って生きていきます。この研究では、親のどんな栄養状態が子の栄養適応体質にどんな影響を及ぼすかを調べるとともに、それを応用して絶滅危惧種の保全や人間と動物のよりよい関係構築につなげようとしています。

初期栄養の影響を調べる実験

 実験ではいろいろな動物の母親に、さまざまな栄養のえさを与えて異なった栄養状態をつくり、生まれた子どもの成長の早さや病気への耐性など、どういう形質を持っているかを調べることから始めます。これを妊娠中、そして授乳中に行い、血液中のホルモンや遺伝子発現などを調べていきますが、動物の食性によって特定の傾向があることが明らかになってきています。
 例えば、出産時に母親の栄養状態を絞りすぎると、子どもが将来太りやすいという結果が実証されています。牛や豚などの産業動物であれば、太りやすいのでえさが少なくても成長させることができますし、えさの少ない環境で生活する野生動物であれば、少ないえさを効率よく使って生きられるという利点があります。ケースに合わせて応用することでさまざまな恩恵が期待できます。

進化論にもつながる研究分野

 初期栄養の研究は、遺伝子そのものを操作するクローン技術やゲノム編集とは手法・アプローチが異なりますが、環境への適応や形質の獲得といったゴールは近いものがあり、それを栄養との関係性で解明していくのがこの研究分野です。今後の課題は、動物ごとの傾向や一致性をどう分析し、体系化していくかにあります。
 親の栄養状態から子を知ることと、子の栄養状態から親の栄養状態を知ること、その相関関係をさらに明らかにできれば、数世代前の情報も知ることができ、ゆくゆくは進化論に迫るような、非常に大きな可能性を秘めた学問なのです。


この学問が向いているかも 動物栄養学、栄養生化学

日本獣医生命科学大学
応用生命科学部 動物科学科 教授
太田 能之 先生

メッセージ

 動物は物理と化学の集大成による生命現象の最たるものですが、物理と化学でも謎がたくさん残っていることからも、説明できない現象がてんこ盛りです。なので、私たちは動物の多くのことを未だ理解できていないと言え、教科書は現時点で証明されて確からしいことを勉強する水準であるといえます。大学では研究を通してその先のことに触れることができます。そして解っていることと解っていないことが区別できるようになり、動物ともっとうまく付き合っていくことができるはずです。「無知の知」を意識しながら動物と接してほしいです。

先生の学問へのきっかけ

 現在の道に進むようになった一番のきっかけは高校時代の恩師の存在です。その恩師は生物の先生で草食のネズミの研究をされていて、その分野で日本初となる研究成果も挙げた先生でした。その先生が研究についてすごくうれしそうに語っているのを見て、同じ道をたどってみようと思いました。初期栄養の研究は、学生実習で鶏の卵を使った実験をする中で着想を得ました。これまでの研究でタッチされていない分野だったこと、栄養を与えただけで体づくりが劇的に変化することを発見したことがきっかけとなり、約30年間研究を続けています。

先輩たちはどんな仕事に携わっているの?

飼料会社(ペットフード含む)/動物園/実験動物関連など

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太田 能之 先生がいらっしゃる
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 いのちを見つめ続ける大学
 
 本学は、明治14(1881)年に東京都文京区にある護国寺の一隅で開学して以来、生命科学系の最高学府として140年の歴史があります。
 獣医学部(獣医学科・獣医保健看護学科)と応用生命科学部(動物科学科・食品科学科)の2学部4学科を置き、高度獣医療への対応、生物多様性の保全、食資源となる産業動物の生産、産業動物飼育環境の整備、食品の安全性の確保などの社会的ニーズに応えていける「生命・環境・食」のスペシャリストを育成しています。

※夢ナビ講義はそれぞれの先生の見解にもとづく講義内容としてご理解ください。

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