夢ナビ 夢ナビ

検索結果一覧へ戻る

講義No.11109

「胥吏」~科挙官僚の陰の存在

表舞台には現れない存在「胥吏」

 隋から清まで約1300年間続いた中国の官僚登用試験を「科挙」といいます。幼児期から一族の希望を託され、財をつぎ込んで英才教育を受け、1000倍とも言われる競争率を勝ち抜いてこの試験に合格した官僚たちは、政治をつかさどったスーパーエリートです。
 一方、その陰にいた「胥吏(しょり)」という存在はあまり知られていません。胥吏とは書類の作成や帳簿の管理を行う事務職で、官僚を補佐して役所を運営する仕事を担っていました。いわば「下働き」の身分であったため、胥吏についてはまとまった史料が残っていませんが、中国の政治・社会を考える上ではとても重要な存在です。

科挙官僚を支えているのに評価されない?

 中国の科挙官僚が地方官となる際には、自分の地元ではなく縁もゆかりもない土地に配属されました。そこで仕事を行うためには、その地方で採用され、現地の事情をよく知る胥吏の協力が不可欠でした。彼らの計算能力や書類作成能力、幅広い知識なしには、科挙官僚は地方を治めることは出来なかったのです。
 しかし、科挙官僚が残した文章には、その胥吏をいやしむ言葉が並んでいます。例えば、「胥吏は民衆から賄賂を取ってばかりいるので、厳しく取り締まらなければならない」など。これはどういうことなのでしょうか。

中国の競争社会の象徴

 高い読み書き能力や行政の知識を持つ胥吏の中には、科挙の受験に失敗し官僚になれなかった人々が含まれていると考えられます。また、胥吏の地位はお金でやりとりされることも多く、商売などで成功した者が胥吏の身分を買って特権を獲得することもありました。こうした胥吏たちは、競争を勝ち抜いたエリートである科挙官僚から見れば「敗者」や「成り上がり者」です。確かに庶民を虐げる胥吏も多くいたようですが、それに加えて科挙官僚の胥吏に対する見方が、さきほどのような言葉の背景にあったのです。胥吏という存在や、科挙官僚の胥吏に対する見方には、厳しい競争社会である中国の特徴が現れていると言えるでしょう。


この学問が向いているかも 歴史学、中国史学

別府大学
文学部 史学・文化財学科 准教授
宮崎 聖明 先生

先生がめざすSDGs
メッセージ

 大学の歴史学では、高校で学ぶ歴史の背景や周辺事情についても学びます。表に出てこない存在について学ぶことで、社会の在り方や、政治の在り方のより深い部分を理解することができます。
 歴史を研究するのは、もちろんその時代や対象がおもしろいからですが、同時に、自分たちとは別の社会で生きた人々の暮らしを知り、考え方に触れることでもあります。他者への理解を通じて、自分が普段暮らしている社会の常識に気づき、自分の生き方・考え方を見直すことができるのは、歴史を学ぶ醍醐味(だいごみ)です。

先生の学問へのきっかけ

 子どもの頃から父の本棚にあった歴史の本を読んでいるうちに、さまざまな国・地域の歴史が好きになり、史学科に進みました。学部生の頃、中国に一年間留学しました。その時に、現地の人々とふれあううちに中国という国、社会により強く興味を持つようになり、帰国後、中国史を専攻することを決めました。史料を読み、中国の歴史を学ぶ中で、中国の歴史の奥深さとともに、留学の時のさまざまな体験が思い出され、長い歴史を経ても社会の根底にあるものはつながっているんだな、と実感しています。

先輩たちはどんな仕事に携わっているの?

教諭(小中学校・高等学校)/公務員(事務職・文化財専門職)/大学院進学/銀行員

大学アイコン
宮崎 聖明 先生がいらっしゃる
別府大学に関心を持ったら

 別府大学は、「真理はわれらを自由にする」を教育理念に、学生の可能性を広げる“愛”に満ちた教育を展開しています。3学部・6学科、大学院を設置している本学は、恵まれた美しい風土に育まれ、国際観光都市という立地環境を生かして、国際社会・地域社会に貢献できる人材の育成に努めています。また、キャンパス内の環境整備にも力を入れており、中庭や教室棟の整備はもちろんのこと、学生寮の建て替えなど、より良い環境で充実した学生生活が送れるよう学生目線での改善にも積極的に取り組んでいます。

※夢ナビ講義はそれぞれの先生の見解にもとづく講義内容としてご理解ください。

TOPへもどる