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講義No.11079

鉄と水素は仲が悪い? 水素社会の実現にむけた鉄鋼材料の開発

次世代エネルギーの本命

 地球環境問題が深刻化するなかで、水素エネルギーが次世代のエネルギーとして注目されています。水素は燃焼させても二酸化炭素(CO₂)を出さないため、脱炭素社会実現の切り札となるでしょう。この水素エネルギーを活用したのが燃料電池自動車(FCV)で、究極のエコカーともいえます。またFCVにも使われている燃料電池システムは、発電やロボット、産業機械などでの市場拡大が期待されています。しかし、水素を利用する際には、使用する金属の「水素脆化(すいそぜいか)」という技術課題があり、部品などの材料に制約が多く、普及拡大の障害となっています。

水素脆化とは?

 水素脆化とは、金属素材の中に吸収された水素によって、金属の強度が低下する現象のことをいいます。水素原子は直径が小さいので、圧力が加わると金属の結晶構造の中に侵入してしまい、金属の組織に破壊や亀裂が生じると考えられています。しかしそのメカニズムの詳細は、まだよくわかっていません。
 特に鉄鋼は水素脆化によって強度が大きく低下するので、高圧で水素をタンクに格納する必要があるFCVの開発では大きな技術課題となっています。金属材料として、鉄鋼は汎用性が高いため、水素脆化メカニズムの解明と、水素に強い構造の開発研究が特に求められているのです。

鉄鋼と水素の関係を数値化

 鉄鋼はその結晶構造によって特性が異なっており、オーステナイトやマルテンサイトと呼ばれる構造を持った鉄鋼が幅広い分野で使われています。鉄鋼の水素脆化のメカニズムの解明と、水素に強い鉄鋼開発のためには、こうした鉄鋼の種類別にさまざまな条件下で実験して、数値データをとる「定量的な研究」を行う必要があります。具体的には、種類別に水素の影響と水素適合性を調べるX線回折分析法(XRD)という方法があります。鉄鋼と水素の関係を知ることは、環境にやさしい燃料電池の実用化や脱炭素社会への転換を担い、水素社会という新しい未来を切り開くために重要な研究なのです。


この学問が向いているかも 機械工学、材料工学

山口大学
工学部 機械工学科 准教授
マカドレ アルノー 先生

先生がめざすSDGs
メッセージ

 私たちの身近にあふれている鉄ですが、こんなに面白く、美しい金属はありません。熱を加えたり、ほかの金属と組み合わせたりすることで、いろいろな姿を見せてくれます。鉄を加工して、社会に役立つ物をつくり出すことができますし、さらにリサイクルすることも可能です。
 その一方で鉄には未知なる部分が多く、研究対象としても無限の可能性があります。特に水素と鉄は「愛憎関係」ともいえるほど複雑で、研究は大変です。もし興味があれば、あなたも挑戦してみてください。続けていくうちに、きっと見えてくることがあると思います。

先生の学問へのきっかけ

 フランスでの子ども時代、馬の蹄鉄を職人さんが加熱し、ハンマーでたたいて調整している様を見るのが好きでした。鉄が色んな形に変わるのが、不思議で面白く、興味を持ちました。大学でコンピュータサイエンスを学んでいましたが、ずっと材料のことを勉強したいと考えていました。そこで大学院では構造材料を専攻し、日本への留学を機に日本人の恩師との出会いがあり、研究の道に進むことになりました。自分の興味のある分野を諦めずに追究すれば、不思議と応援してくれる人が現れて、道は開けると思います。

先輩たちはどんな仕事に携わっているの?

土木建築会社 機械関係/公務員 水道局/金属会社 製作関係

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マカドレ アルノー 先生がいらっしゃる
山口大学に関心を持ったら

 国公私立大 合同進学オンラインイベント「夢ナビライブ2021Web in Autumn」に、マカドレ アルノー 先生が参加! 先生の講義ライブ動画を10月31日(日)までオンデマンド配信するほか、Zoomで先生に直接質問ができる「講義ライブ質問対応・研究室訪問」を10月2日(土)・3日(日)に実施。夢ナビライブは、600名以上の大学教授や200近い大学がさまざまなプログラムを実施する大型オンラインイベントなので、まずは「夢ナビライブ」で検索してください。

※夢ナビ講義はそれぞれの先生の見解にもとづく講義内容としてご理解ください。

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