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講義No.11011

効果的に有機合成ができる場を作り出す

人体は酵素が反応しやすい場

 人間の体内では、体温程度の温度下で酵素が働いて反応が進みます。しかし実験室内のフラスコで同じ反応をしようとすると、高い温度を与えたり、強い酸やアルカリを加えたりする必要があります。体内のように温和な条件で反応を起こす場は作れないものでしょうか?

プロトンによる反応

 人体の70%は水で構成されています。水分子の中の酸素は水素より電子を引っ張る力が少し大きいので、水分子の酸素はごくわずかにマイナスを帯びていて、反対に水素はプラスを帯びています。ここにもう1つの水分子を入れると、1つ目の分子のマイナスを帯びた酸素原子と2つ目の分子のプラスを帯びた水素が引き合います。これが水素結合の状態です。
 それでは水分子が並んだ中に、電子を取り除いた水素原子「プロトン」を1つ入れたらどうなるでしょうか。最初の水分子の中のマイナスを帯びた酸素とプロトンがつながり、もともとある水素原子の1つと一緒になって新たな水分子を作ります。ここで押し出された余剰のプロトンは隣の水分子の酸素と結合します。これが繰り返され、最後の水分子の中から余ったプロトンが現れるのです。つまり、プロトンにより最初の1つを帯電させれば、すべての分子を一瞬で帯電させることになるのです。アレニウスの定義によれば、水溶液中で水素イオンを放出する物質は酸だとされているため、プロトンにより帯電させることで水は酸となり、帯電した場所ごとに酸による触媒ができます。

反応の場の構築

 すべての元素は原子核と電子でできており、原子核と原子核が電子ののりでくっついて物質は成り立っています。電子ののりを切ったりつけたりすることが化学的な反応だと考えれば、思うように電子を動かせる場を作ることで自然な反応が導けるのです。反応のための特殊な環境を作らずに、より自然な形で効果的に有機合成ができるようになるだけでなく、人体の中に薬を取り込んだときの反応の検証にも応用できるのです。


この学問が向いているかも 薬学、有機化学

横浜薬科大学
薬学部 漢方薬学科 教授
磯村 茂樹 先生

先生がめざすSDGs
メッセージ

 何をやりたいかと考えるより、好きなことをとことんやることが大事だと思います。好きだったら、それがもし難しくても頑張れるし、興味があれば習うだけでなく自分から探しにいけます。
 好きなことを突き詰めていると、ほかの分野の知識などが必要になることもあります。最初はそれだけをやっていればいいけれど、先に進むにはいろいろなことを取り入れていく必要があるのです。そうやっていけば、好きなことの周りに学びのループができあがります。ぜひ、好きなことを一生懸命楽しく突き詰めてください。

先生の学問へのきっかけ

 高校の化学の試験で、たまたま良い点が取れました。それがすごくうれしくて、次も頑張ってみようかなと思ったら、さらに成績が上がり、化学の勉強がどんどん面白くなっていったのです。化学が学べる学部として理学部や工学部なども受験し、その中で受かった薬学部に進学。薬剤師の資格を取って就職するつもりでしたが、大学の先生から、化学の本質が好きなら大学に残る道もあると勧められ、研究者の道へと舵を切りました。好きな科目を一生懸命やっていたことと、周りの人に恵まれて、今の自分がいるように思います。

大学アイコン
磯村 茂樹 先生がいらっしゃる
横浜薬科大学に関心を持ったら

 全国初の6年制薬科大学として開学した本学は、患者一人ひとりの苦しみを理解できる”惻隠の心”と”心の温かさ”を育てる教育を実践する。学長にはノーベル物理学賞を受賞した江崎玲於奈先生が就任。世界的な科学者の視点で個性教育を行うとともに、強く薬剤師を志す人の努力にはサポートを惜しまない風土が強みである。

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