夢ナビ 夢ナビ

検索結果一覧へ戻る

講義No.11006

細胞のシステムを乗っ取る「RNAウイルス」

RNAウイルスと細胞の関係

 新型コロナウイルスやエボラウイルスなどの「RNAウイルス」はときに人類の脅威となりますが、単体では遺伝子の断片にすぎません。細胞に侵入し増殖することで、体内で勢力を拡大するのです。ウイルスは細胞が持っている機能や材料を利用して増殖します。そのメカニズムがわかれば、その仕組みを抑制するような薬の開発に役立てることが可能です。

細胞のシステムを乗っ取る?

 細胞内で子孫ウイルスがつくられ、細胞外に放出されるとき、もともといた細胞を傷つけないように自身を膜で覆って出芽します。このとき利用しているのが、宿主の細胞が持っている粒子形成や細胞分裂のシステムです。
 例えばRNAウイルスの中には、ESCRT(エスコート)を使って出芽に必要な膜を作るものがいます。ESCRTとは細胞分裂に重要な役割を果たすタンパク質群のことで、ウイルスが出芽して細胞膜から離れていくときのシステムは、細胞分裂で細胞同士が切り離されるシステムと同じです。ESCRTを使う経路を断てばウイルスの増殖を抑えることができますが、細胞分裂も止まってしまいます。この課題を解決するために、ESCRTの経路を形成する約30種類のタンパク質の中から、細胞分裂に必要なものとウイルスの出芽に作用するものの特定が進められています。

ウイルスに擬態した薬の開発

 RNAウイルスの研究は薬の開発にも役立てられています。ウイルス感染による重症化を防ぐための免疫には、比較的短期間しか持続しないとされる「液性免疫」と長期間続くとされる「細胞性免疫」があります。細胞性免疫を獲得するには、感染するか、ウイルスの遺伝子情報を人工的に細胞質に送り込まなければなりません。この送り込まれる遺伝子情報がmRNAワクチンです。一方安全性が確認されているこれまでのタンパク質のワクチンは、ウイルスとは異なり、そのままでは細胞質内には入れません。そこで、ウイルスが出芽するシステムを真似ることで、タンパク質を人工ナノカプセルに入れ、細胞内に届ける仕組みが開発されています。


この学問が向いているかも 細胞生物学、ウイルス学

弘前大学
農学生命科学部 分子生命科学科 准教授
森田 英嗣 先生

先生がめざすSDGs
メッセージ

 大学入学は受験勉強の終わりではなく、新たな学びの始まりです。大学では興味のある分野を好きなだけ学ぶことができるので、楽しみにしていてください。
 日常生活では客観的にさまざまな情報を取り入れ、冷静に判断してほしいです。世の中には正しい情報だけでなく、偏った意見や根拠のないデマなどもあふれています。情報を一方的に受け取ってうのみにするのではなく、積極的に情報を集めて自分なりに考えることも大切です。こうした習慣を身につければ、大学で研究をするときにもあなたの助けとなってくれるはずです。

先生の学問へのきっかけ

 子どもの頃から生き物が好きで、よく釣りをしていました。生物学科を選んだのは、大好きな生き物を研究してみたいと思ったからです。特に解明が進んでいるヒトの研究をすれば、充実した基盤のうえでさらに一歩進んだ発見ができると考えました。ウイルスに興味を持ったのは、大学で研究室に入ってからです。なぜ単純な遺伝子の断片であるウイルスが増殖するのか、感染後の細胞ではなにが起こっているのかと疑問を抱いたのです。現在も、病気の治療などの社会貢献にもつなげたいと思い、ウイルスの研究に取り組んでいます。

先輩たちはどんな仕事に携わっているの?

製薬会社研究員/食品会社研究員

研究室
大学アイコン
森田 英嗣 先生がいらっしゃる
弘前大学に関心を持ったら

 国公私立大 合同進学オンラインイベント「夢ナビライブ2021Web in Autumn」に、森田 英嗣 先生が参加! 先生の講義ライブ動画を10月31日(日)までオンデマンド配信するほか、Zoomで先生に直接質問ができる「講義ライブ質問対応・研究室訪問」を10月3日(日)に実施。夢ナビライブは、600名以上の大学教授や200近い大学がさまざまなプログラムを実施する大型オンラインイベントなので、まずは「夢ナビライブ」で検索してください。

※夢ナビ講義はそれぞれの先生の見解にもとづく講義内容としてご理解ください。

TOPへもどる