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講義No.10967

背景を知り感性を磨く、謎解きのような文学研究

「羅生門」のストーリーは1つじゃない?

 芥川龍之介の「羅生門」は、「下人の行方は、誰も知らない。」という最後の一文が有名です。しかしこの小説は二度、大きく書き直されているのです。まず雑誌に発表され、単行本に収まり、次の新しい単行本にも再掲載されたのですが、先の一文があるのは二回目の単行本バージョンです。さらに、芥川が大学在学中に書いたノートや試し書きの原稿用紙など、雑誌に発表される前の試作品も残っています。それらを調べると、下人は侍だったり、京都に流れ着いたよそ者だったりしたことがわかります。何より面白いのは、「誰も知らない」はずの下人の行方が、はっきりと書かれたバージョンも存在することです。芥川の中には明確な答えがあったのに、最終的にはあえて「謎」にしたのです。

古典文学との比較

 また、「羅生門」は『今昔物語集』に収録された「羅城門登上層見死人盗人語」を原作としています。「羅生門」では下人が飢え死にするか盗人になるかの二択で迷い、苦悩します。しかし『今昔物語集』の人物は迷うことはなく、最初から最後まで盗人です。文学研究では、こうした設定や表現の違い、それにより読者の受け止め方がどう変わったのかといったことを、昔の資料とも比較することで読み解いていきます。

名作は未来のクリエイティビティをも刺激する

 大正時代に発表された「羅生門」は、第二次世界大戦後、黒澤明監督によって映画化されました。映画では国際的にも高く評価されているシーンがあります。物語の終盤、底深い人間不信に陥った登場人物たちが、捨てられた赤ちゃんの肌着を盗むかどうかでせめぎ合う場面です。小説「羅生門」でも『今昔物語集』でも着物を剥ぎ取る行為が描かれますが、創作者は表現方法や人物を変えて、何度も人間の真の姿というテーマに迫ろうとしているのです。文学は、作者自身、映画監督、そして未来の作家たちによって「書き直され」、次の創作につなげられていきます。文学はメディアを超えて、姿を変えながらも受け継がれているのです。


この学問が向いているかも 文学、日本近現代文学、映画学

甲南大学
文学部 日本語日本文学科 准教授
友田 義行 先生

先生がめざすSDGs
メッセージ

 大学での研究は、高校での授業と地続きです。日本文学の研究にも、現代文や古典などの基礎力が役立ちます。教科書ほど充実した短編集はありませんので、ぜひ堪能してください。評論文には科学や哲学などいろいろな問題が盛り込まれており、知識だけでなく考えかたも広げてくれるでしょう。文学は時代背景がわかるとさらにおもしろくなるため、歴史の知識も大切です。高校生活で長編小説に挑戦するのも楽しいですね。じっくり腰を据えて作品世界に没頭した経験は、かけがえのない財産になります。

先生の学問へのきっかけ

 子どもの頃から小説やマンガ、ゲームが大好きで、中学時代は古本屋を巡って珍しい本を探すのが趣味でした。高校時代にはとても素敵な国語の先生方に出会い、文学を読み解くおもしろさを教わりました。ゲームやマンガの設定にも、神話や民話の知識が入り込んでいたり、小説のような物語の構成をとっていたりするものは多く、オリジナルのドラマや映画にも、有名な文学作品のセリフが使われていたりすることがあります。文化の「核」には文学があるという気づきが、文学研究へ向かうことになったきっかけです。

先輩たちはどんな仕事に携わっているの?

教諭(小学校・中学校・高等学校)/出版業/学習塾/公務員(市役所)/食品小売業/銀行員/宿泊業/ガス業

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友田 義行 先生がいらっしゃる
甲南大学に関心を持ったら

 国際都市・神戸に位置する本学では、建学の理念「人物教育の率先」を教育の原点とし、ミディアムサイズの総合大学だから実現できる、学部を越えた融合型教育で優れた人材育成を実践しています。現在、岡本(神戸市東灘区)・西宮(西宮市)・ポートアイランド(神戸市中央区)に3つのキャンパスがあり、8学部14学科の多彩な学びを展開。また、全学部の学生がグローバル教育を受けられる融合型グローバル教育や共通教育科目の充実により、異なる学部の学生同士が自然につどい、刺激し合い、融合する学びのフィールドが実感できます。

※夢ナビ講義はそれぞれの先生の見解にもとづく講義内容としてご理解ください。

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