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講義No.10955

「かまぼこ」で海の豊かさを守る循環づくり

「磯焼け」を防ぐには

 沿岸の海藻は光合成をして海中に酸素を供給します。同時に魚の赤ちゃんのエサとなったり、大きな魚に捕食されるのを防ぐ隠れ家になったりという役割があり、非常に重要な存在です。ところが、海藻を食べる特定の魚、アイゴやイスズミが沿岸の海藻を食べつくす「磯焼け」が日本中で問題になっています。アイゴやイスズミは市場で人気がないので漁師が獲らず、数が増えているのです。しかし、もしこれらの魚も加工品の原料として売れるなら漁も成立します。人間が食べることで生息数が今よりも減れば、藻場が回復し海を守ることにつながります。

人気がない魚を「かまぼこ」に加工

 「かまぼこ」は魚のすり身と塩でできています。製造工程ではまず魚肉を取り出し、その魚肉を水で洗います。その後、水分を搾り取り、塩を入れて魚肉を溶かしてから加熱します。歯ごたえのある食感は、塩と加熱で作られるタンパク質の三次元網目状構造によるものです。工程中、水で洗うことで魚肉の臭みや雑味が取り除かれます。アイゴやイスズミは見栄えが良くなく、臭みもあるのですが、かまぼこに加工することで食べやすくなるのです。魚肉だけを取り出すかまぼこ加工は、漁獲量のわりに活用されていない小魚やエビ、見た目が個性的なオオグソクムシなどの甲殻類の商品化にも向いています。

商品価値のないものに価値を付加する食品加工

 売れなかった水産物を価値があるものに変えていくのが水産加工の研究です。加工品自体が世の中にどう役に立つのか、その加工品が流通することで世の中がどう変わるのかというイメージが重要です。加工しておいしく食べれば、飢餓をなくすことにもつながり、沿岸地域の人々の活性化にも役立ちます。現在、製造技術の根本はできており、量産設備を整えるのが次の課題です。
 かまぼこ以外の加工品としては、魚の内臓を溶かしてフィルムにする研究も進んでいます。レジ袋などに活用できれば、自然環境に戻る素材としてプラスチックごみ問題解決の一助となるでしょう。


この学問が向いているかも 水産学、食品加工学

東京海洋大学
海洋生命科学部 食品生産科学科 教授
大迫 一史 先生

先生がめざすSDGs
メッセージ

 世の中は自分が思った通りに行くことばかりではありません。ただし、与えられた環境にあらがうのではなく、その中で一生懸命やっていけば、道は開けるものです。人は1日の半分以上、つまり人生の半分以上は仕事をして過ごします。ですから、仕事をおもしろいと思わないのはもったいないです。
 とりあえず頑張ってみると楽しいこともあり、楽しんでやれば好きになり、将来も広がっていきます。最初は水産加工の仕事に消極的だった私自身の人生からも、それは実証されています。

先生の学問へのきっかけ

 子どもの頃から魚やエビ、カニなどを捕まえては、飼って観察するのが大好きでした。大学では水産学科でカニの研究室にいました。長崎県庁職員になり、水産試験場で知識も経験もない水産加工部門を担当したのが加工との出会いです。地元の加工業の方々にプロとして頼られる部署なので、いい加減な対応はできません。自分なりに勉強し実験をして知識を深め、働きながら博士号も取りました。相談者の方の「ありがとう、助かった」という言葉で世の中の役に立つ仕事だと実感でき、一生、水産加工を究めようと決めました。

先輩たちはどんな仕事に携わっているの?

国立大学大学教員/母国の大学教員/食品会社研究員/医療機器メーカー研究員/地方研究機関研究員

大学アイコン
大迫 一史 先生がいらっしゃる
東京海洋大学に関心を持ったら

 東京海洋大学は、全国で唯一の海洋にかかわる専門大学です。2大学の統合により新しい学問領域を広げ、海を中心とした最先端の研究を行っています。海洋の活用・保全に係る科学技術の向上に資するため、海洋を巡る理学的・工学的・農学的・社会科学的・人文科学的諸科学を教授するとともに、これらに係わる諸技術の開発に必要な基礎的・応用的教育研究を行うことを理念に掲げています。

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