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講義No.10937

物質を分解する酵素タンパク質を超伝導磁石で徹底分析!

物質ごとに「鍵」と「鍵穴」は決まっている

 酵素はタンパク質でできていて、体の中の化学反応に触媒として作用します。食べたものの栄養素を吸収するために分解、有毒な物質なら、それを分解し排除します。酵素は体内に数千種類存在し、分解対象となる物質ごとに「鍵穴」と「鍵」のような対になる酵素が決まっています。糖質を分解するには、糖質分解専用の酵素が必要なのです。
 物質を分解するとき、その物質にくっつくのが酵素を構成しているタンパク質(酵素タンパク質)です。この酵素タンパク質の立体構造や動きを知り、鍵と鍵穴の組み合わせを解明すれば、タンパク質の働きを制御することが可能になります。

超伝導磁石で分子構造を解析する

 酵素タンパク質の形を見る方法の1つがNMR(核磁気共鳴)です。原理は病院の検査で使われるMRI(磁気共鳴画像)と同じで、超伝導を利用した大型の磁石を用いて物質の分子構造を原子レベルで解析する装置です。この解析の特徴は、電子顕微鏡よりも小さな分子に使え、X線結晶構造解析よりも分子の動きや変化を細かく分析できることです。特にアミド基よりも信号の強いメチル基を解析することで、個々の分子の距離情報や結合の様子、またほかの物質がどこにどうくっついているのかなど、詳細なデータが得られます。

薬を開発する基礎研究としての重要性

 グリセルアルデヒド3-リン酸脱水素酵素(GAPDH)という酵素があります。ブドウ糖の代謝を担う重要な酵素で、近年、新たにアルツハイマー病やパーキンソン病の原因に関わることが判明しました。いろいろなものをペタペタとくっつける働きを持ち、ウイルスの一部なども結合してしまいます。そこでNMRによってウイルスがタンパク質の立体構造のどこに、どんなふうに結合しているのかを調べ、その結合をピンポイントで切り離すにはどういう物質で反応させればよいのかなどを分析することで、有効な薬の開発につながります。NMRによる酵素タンパク質の解析は、創薬に欠かせない基礎研究なのです。


この学問が向いているかも 構造生物学

横浜市立大学
理学部 理学科 教授
池上 貴久 先生

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メッセージ

 進路決定で、就職に有利な学科を選ぶ傾向があります。それは本当にいいことでしょうか?
 やはり興味に勝るものはなく、興味さえあればどんどん勉強して吸収できます。就職に有利なだけで好きでない学科を選んでも4年間気が進まない状態で勉強し就職も不本意に終わるかもしれませんし、就職から40年以上好きでない仕事を続けるのは果たして自分の将来にいいことですか? 40年もすれば社会も変わり、自分の好きなことが一番有利な時代になるかもしれません。「好き」を選ぶことを考えてください。

先生の学問へのきっかけ

 高校生の頃は物理と化学が好きで、大学は生物学科に入学。4年生の時に研究室で出会ったのがNMRです。分子というのは目に見えない小さなものです。その形を知るには、さらに小さな原子と原子の間の距離を割り出し、コンピュータで計算して初めてわかります。そこには私が好きな生物、物理、化学がすべて詰め込まれていました。卒業後は電機メーカーでソフトウェア設計を手がけていましたが、NMRでの分析が薬の開発に欠かせない基礎研究であることから、創薬に結びつけたいという思いが高まり、研究の道へと進みました。

先輩たちはどんな仕事に携わっているの?

化学会社マーケティング/医療機器メーカーマーケティング/食品会社生産管理/ガス会社開発

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 横浜市立大学は、「実践的な教養教育」を導入しています。高度な専門知識を教養教育を通じて身につけ、バランスのとれた人材育成を図る教育システムです。日本を代表する国際港湾都市に位置する大学として、世界に羽ばたく人材の輩出を目的に、国際感覚を養うさまざまな取り組みも充実しています。個々の可能性を最大限引き出すための厳しい教育プログラムを愛情を持って進めていきます。

※夢ナビ講義はそれぞれの先生の見解にもとづく講義内容としてご理解ください。

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