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講義No.10906

多文化共生社会のカギとなるエスニック・アイデンティティとは

アイデンティティの対立と理解

 エスニック・アイデンティティとは、民族集団への帰属意識や同類意識をさす人類学用語です。内容は大きく2つに分けられ、1つは生物学的に受け継いでいくもので、人種としての遺伝的特徴などです。もう1つは家族や学校教育、地域のコミュニティなど、社会の中で共有される経験によって後天的に身につける言語、生活様式、価値観、宗教などです。
 2つ以上のエスニック・アイデンティティが存在する場ではその違いが対立を生み、しばしば差別や摩擦などの問題が起きています。多文化共生社会を実現するには、互いの歴史的、民族的背景を理解することが大切です。

年代とともに変化している在日中国人

 在日中国人の歴史とともにエスニック・アイデンティティを考えてみましょう。戦前から現在まで、日本には多くの中国人が移り住んできました。2020年末現在、日本に中長期的に滞在する中国人は約78万人で、そのうち永住している中国人やその家族は約28万人です。その中で、1980年代以降に来日した在日中国人をニューカマー世代、それ以前をオールドカマー世代と呼んでいます。ニューカマー世代の中でも、80年代~90年代は社会主義国家から抜け出し、自由を求めて家族と離れ出稼ぎに来る人たちが主でした。2000年以降は一人っ子政策のもとで、本国で何不自由なく暮らした富裕層の子どもたちが留学してくるケースが多くなりました。

中国と日本、2つのアイデンティティ

 中国には56もの少数民族があり、地方ごとに文化や習慣が異なります。そのため、もともと中国人は、個人、地域・民族、国家という重層的なアイデンティティを持ち合わせ、場面に応じて使い分けています。また社会主義国家ということから、国家への帰属意識が高いのも特徴です。そうした中国人が来日し、日本語や日本文化、慣習などに触れることで、新たなエスニック・アイデンティティを身につけ変化していくのです。在日中国人について理解しようとする時、まずはこうした背景を知っておく必要があります。


この学問が向いているかも 社会学、国際社会学、移民研究

横浜市立大学
国際教養学部 国際教養学科 准教授
坪谷 美欧子 先生

先生がめざすSDGs
メッセージ

 エスニック・アイデンティティはみなさん自身にも深く関係しています。これは民族間、人種間だけではなく、例えば1つの社会、コミュニティの中でも文化・風習が異なるケースはたくさんあるからです。そんな「異文化」との出会いを大切にしてほしいです。
 私たちの周りには異文化がたくさんあります。自分のルーツや文化に誇りを持ちながらも、国が違う、民族が違う、歴史や文化が違う、異なるエスニック・アイデンティティに触れ、それを理解してみることが大切です。多文化・異文化共存の社会を担える人になってほしいです。

先生の学問へのきっかけ

 最初は法学部へ進学し、国際法を勉強していました。そこで国同士の摩擦や紛争はなぜ起こるのかを学んでいましたが、法律を相手にするのではなく、人の顔が見える研究に興味を持ちました。その頃地元の横浜には外国人が増え、「この人たちは何のためにここに住んでいるんだろう?」「なぜ差別が起きるんだろう?」と疑問を持つようになったことから、社会学の移民研究へと踏み込んでいったのです。神奈川が研究のフィールドであることで、古くからの在日中国人も多く、年代による変遷もわかりやすいのが強みです。

先輩たちはどんな仕事に携わっているの?

国家公務員(人事院)/地方公務員(福祉事務所)(教育委員会)/教諭(高校)/日本語教師/児童発達支援事業所/航空会社(地上勤務)(CA)(SE)/商社営業職/運輸営業/人材派遣グローバル人材担当

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坪谷 美欧子 先生がいらっしゃる
横浜市立大学に関心を持ったら

 国公私立大 合同進学オンラインイベント「夢ナビライブ2021Web in Autumn」に、坪谷 美欧子 先生が参加! 先生の講義ライブ動画を10月12日(火)までオンデマンド配信するほか、Zoomで先生に直接質問ができる「講義ライブ質問対応・研究室訪問」を10月2日(土)に実施。夢ナビライブは、600名以上の大学教授や200近い大学がさまざまなプログラムを実施する大型オンラインイベントなので、まずは「夢ナビライブ」で検索してください。

※夢ナビ講義はそれぞれの先生の見解にもとづく講義内容としてご理解ください。

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