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講義No.10887

同じ景色を見ている時、私たちは本当に同じものを見ているの?

人によって景色は違って見えている

 気の合う友人と「それ、わかる~!」と盛り上がっている時、本当に同じものを見て、同じように感じているのでしょうか? そもそも同じ人間がいない以上、同じ景色を見ても、人によって見えている色も、受け取る印象も違うのが当然なのに、わかりあえるのは不思議なことです。
 かつて、進学や就職の際に色覚を調べていた時代には、「要検査」と言われる人が国内だけで何百万人もいました。文化によっては、虹の色を6つや3つと表現することも知られています。それほど、色のとらえ方は多様で、単純にどれが正常で、そうでないから異常などと、2つに分けられるものではありません。

見え方は何によって決まるのか?

 一般的に、色覚は遺伝によって決まると考えられています。遺伝的な錐体(網膜の光センサー)の違いで、赤や緑を鋭く弁別する人としない人がいるので、実際には人によって違った色を見ていることが知られています。しかし、色覚を切り口にした視点でDNA配列を調べたり、研究参加者が実際に色を見ている時の心理量や脳の活動を調べていくと、ものの見え方の違いは先天的な遺伝要因だけでなく、経験によって作られる後天的な神経回路や脳の活動も大きく影響していることがわかってきました。

多様性を前提に誰もが生きやすい社会を

 私たちは普段、実はクラスメイトが違う色を見ている、などということを意識せずコミュニケーションができます。一人ひとりのセンサーに応じた別々の色を脳にインプットするのに、同じ「赤」という言葉でアウトプットする過程には、脳内でそれを可能とする情報処理を行っている可能性があります。遺伝の違いを越えて互いに理解しあう過程で、脳がどのような働きをしているのかを証明しようという研究が進められています。
 社会は多数派のためにデザインされがちですが、多様な人間がわかりあう過程を解き明かすことで、多様性を前提とした誰もが生きやすい社会への展開が期待されます。


この学問が向いているかも 認知科学、視覚学、生理心理学

九州大学
芸術工学部 芸術工学科 准教授
平松 千尋 先生

先生がめざすSDGs
メッセージ

 高校までと違って大学での研究には答えがありません。先入観を疑い、先行する研究者がさまざまなことを言う中で、常に新しいことを学び、いろいろな角度から対象に迫ることで、自分もその研究を一歩進められるよう、日々研鑽していきます。
 新しい流れに乗ることも大事ですが、時には古い研究に立ち返ることも大切です。世界中の研究者と共に取り組む学問が、なんらかの社会的な発展に影響を与えられることが私のやりがいです。ひとつのレンガを積むことに挑戦する喜び、苦しさを味わいながら、共に学んでいきましょう。

先生の学問へのきっかけ

 思春期には、「自分がなぜ生きているのか」に疑問を持ち、自分が他者と違っていることに怖れや違和感がありました。しかし、他者と違うのは特別なことでしょうか? 生物は同じ共通の祖先から進化を遂げて、今のような多様な形で存在しています。私たちの祖先となる生物の生き方を引き継いで、人間という存在があります。進化の視点で見た時、「多様であること=他者と違うこと」が生物の本質であると理解でき、とても安心したことを覚えています。そこから、視覚にフォーカスして多様性を研究するようになりました。

先輩たちはどんな仕事に携わっているの?

漫画家/ゲーム・映像制作会社社員/シンクタンク会社社員

大学アイコン
平松 千尋 先生がいらっしゃる
九州大学に関心を持ったら

 九州大学は、教育においては、世界の人々から支持される高等教育を推進し、広く世界において指導的な役割を果たし活躍する人材を輩出し、世界の発展に貢献することを目指しています。また、研究においては、人類が長きにわたって遂行してきた真理探求とそこに結実した人間的叡知を尊び、これを将来に伝えていきます。さらに、諸々の学問における伝統を基盤として新しい展望を開き、世界に誇り得る先進的な知的成果を産み出してゆくことを自らの使命として定めています。

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