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講義No.10840

2次元物質を重ね合わせて、新たな性質を作り出す

ミルフィーユを剝がすように

 鉛筆の芯の材料にもなるグラファイト(黒鉛)は、ダイヤモンドや石炭と同様に炭素原子の集合体で、ミルフィーユのように薄い層が重なってできています。1枚の層は、原子が横方向に強くつながっているのに対し、層と層とは弱いファンデルワールス力で結合しているため、簡単に剝がすことができます。1層の平面的な物質を2次元物質と呼びますが、グラファイトの2次元物質はグラフェンと言います。なお、同じ炭素でもダイヤモンドはジャングルジムのように原子が立体的につながっている3次元物質で、剝がすことはできません。

モアレ模様が超伝導を導く

 2次元物質は、同じ元素の3次元物質とはまったく違う性質を持っています。また、2次元物質を重ね合わせると、さらに違う性質を見せることがあります。グラフェンは原子が六角形の格子構造で連なっています。2枚のグラフェンを重ね合わせ、片方の層を回転させていくと、一定の角度で「モアレ模様」という元の格子にはない別の模様が浮き出てきます。この時、もともと超伝導体ではないグラフェンが、電気抵抗がゼロになる超伝導の性質になることが発見されました。理由ははっきりとは解明されていませんが、モアレ模様が大きな一つの原子のようになり、そこに電子が閉じ込められるからだと推測されています。

組み合わせ方は無限大

 また、もともと超伝導の性質がある3次元物質に別の2次元物質をのせると、超伝導に達する温度が3次元物質だけの時より高くなり、より常温に近い温度で超伝導状態になることもわかりました。超伝導物質を探す場合、今までは3次元物質の組成そのものを調整する手法を取っていました。しかし、2次元物質を重ね合わせて超伝導の性質を作り出せたことで、別のアプローチから物質を探すことができるようになったのです。モアレ模様の作り方は幾通りもあり、物質の組み合わせ方は無限大です。これらの発見は、次世代の新たな技術につながる可能性を秘めています。


この学問が向いているかも 物理学

大阪大学
理学部 物理学科 教授
越野 幹人 先生

先生がめざすSDGs
メッセージ

 建築や模様を見るとその形が気になる、料理や掃除では効率化を考える、車の渋滞に巻き込まれると渋滞という現象を理屈で解き明かそうとする、これらに当てはまる人は、理系向きだと思います。現代の世の中は、理系の人材を必要としています。AIや量子コンピュータなどの最先端の研究はもちろん、金融の分野でもフィンテックという金融サービスとテクノロジーを融合させた動きが登場しています。あらゆるところで物理や数学の知識は役に立ちます。大学には理系の仲間がたくさんいます。ぜひ、大学であなたの能力を伸ばしてください。

先生の学問へのきっかけ

 大学の物理の授業で、1枚のきれいな絵を見ました。それは曲面の中に閉じ込められた電子の様子でした。もともと模様やパターンを見ると、どうしてその形になるのかを考えるのが好きだったので、きれいな絵と物理とのつながりに興味を抱きました。それ以来、フラクタル模様などが生み出す現象の研究をしていましたが、あくまでも理論上であり、該当する物質のない研究でした。そんな中、2004年のノーベル物理学賞でグラフェンが一躍注目を浴び、今までの研究にグラフェンを当てはめたことから、研究が一気に進み始めました。

先輩たちはどんな仕事に携わっているの?

大学研究員/半導体メーカー/AI開発ベンチャー/宇宙開発関連/新聞社/総研

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越野 幹人 先生がいらっしゃる
大阪大学に関心を持ったら

 自由な学風と進取の精神が伝統である大阪大学は、学術研究でも生命科学をはじめ各分野で多くの研究者が世界を舞台に活躍、阪大の名を高めています。その理由は、モットーである「地域に生き世界に伸びる」を忠実に実践してきたからです。阪大の特色は、この理念に全てが集約されています。また、大阪大学は、常に発展し続ける大学です。新たな試みに果敢に挑戦し、異質なものを迎え入れ、脱皮を繰り返すみずみずしい息吹がキャンパスに満ち溢れています。

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