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講義No.10804

イセエビ類の幼生はクラゲを食べて育つ? 共生の謎を解き養殖をめざす

魚介類の養殖はなぜ難しい?

 食卓に並ぶ魚介類は、ほとんどが成体です。しかし多くの魚介類には、卵から出てきたばかりの幼生としての時代があります。幼生期は成体とは異なる姿や生態を持っており、謎が多いのです。例えば、何を食べているか、どうやって泳いでいるか、といったことも多くの魚介類の幼生では知られていません。そのため、養殖技術がまだ確立されていない魚介類はたくさんいます。そもそも何を餌としているのか、コストを抑えるために安定して入手できる餌はないか、などの研究が進められています。

クラゲを食べるイセエビ類の幼生

 イセエビ類やセミエビ類の養殖に役立つと考えられている餌の候補がクラゲです。これらの幼生は海中でよくクラゲに乗っているのですが、このとき幼生はクラゲを移動手段だけでなく、餌としても利用しているのです。そこで、養殖の餌にクラゲを利用できないか、ミズクラゲやアカクラゲを使って研究しました。その結果、セミエビ類の仲間であるウチワエビの幼生がクラゲを食べて成長できることが確かめられました。クラゲには毒がありますが、幼生は毒に対抗する手段を持っていることも分かりました。海でのクラゲの出現は日和見的で、安定した供給が困難です。そのため、クラゲの生産やクラゲに代わる餌についての研究も進めています。

環境変化は幼生の大敵

 魚介類の幼生はちょっとした水温や波の変化にも敏感です。地球温暖化の影響で海水温が上がると生存率が下がってしまうのはそのためです。養殖では、幼生の成長に適した環境を整えることができると、より多くの幼生がより速く成体まで成長します。たとえば、ウチワエビの幼生は日本周辺の海では15~20度ほどの水温で暮らしていますが、養殖の条件では22~23度でもっとも良く成長します。また、幼生は日の出と日の入りを感知して体内リズムを作り、日の出前後に脱皮します。一つひとつの環境要因に対する幼生の反応を確かめることで、保つべき水温や光の周期などの養殖の条件を作ることができます。


この学問が向いているかも 水圏生産科学

広島大学
生物生産学部 水圏統合科学プログラム 准教授
若林 香織 先生

先生がめざすSDGs
メッセージ

 私が体験してきたことはどれも無駄ではなく、振り返ってみると一つひとつが人生の布石となっていました。あなたにも、身の回りの物事に無駄なことなどないという気持ちで関心を持ってほしいです。例えば、海の中はあなたの住む世界と違う異世界と感じるかもしれませんが、そこに住む動物や植物と私たちには「生き物」という共通点があります。さまざまな世界を理解するための知識や観察眼を一緒に養っていきましょう。
 また、英語を学ぶためには日本語の力をつけることも大切です。普段から正しい日本語に触れ、基礎力を養いましょう。

先生の学問へのきっかけ

 幼いころは自然が身近にあり、植物や動物に接する祖父母と遊んでいるうちに生物に関心を持ちました。高校では文系でしたが、偶然履修した生物の内容に心を引かれ、大学でも勉強したいと思いました。
 イセエビ類の養殖という研究テーマにたどり着いたきっかけは、ダイバーが撮影した写真です。幼生がクラゲに乗る姿が印象的で、自分でも確かめたくてダイビングに通いました。海の中にはまだ知らないイセエビ類の生態や、養殖に生かせる知見が数多くあります。人工的に産卵させる方法などを見つけ、養殖に貢献することが目標です。

先輩たちはどんな仕事に携わっているの?

国家公務員/地方公務員/水産系会社員/製造系会社員/総合商社社員

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若林 香織 先生がいらっしゃる
広島大学に関心を持ったら

 広島大学は社会に貢献できる優れた人材を育成し、科学の進歩・発展に貢献しつつ、世界の教育・研究拠点を目指す大学です。緑豊かな252ヘクタールという広大な東広島キャンパスを抱え、また、国際平和文化都市である広島市内等のキャンパスを含め、12学部、11研究科、1研究所、大学病院並びに11もの附属学校園を有しています。 新しい知を創造しつつ、豊かな人間性を培い、絶えざる自己変革に努め、国際平和のために、地域社会、国際社会と連携して、社会に貢献できる人材の育成のために発展を続けます。

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