夢ナビ 夢ナビ

TOPへ戻る

講義No.10802

創薬を支える! タンパク質のメカニズムを解明

10万種類ものタンパク質の機能

 私たちの体には約10万種類ものタンパク質が存在します。このタンパク質の営みが「臭いがする」「味がする」などの生理現象や病気と関係しており、そのメカニズムについてX線を用いて科学的に研究するのが「構造生物学」という学問です。タンパク質に使用されているアミノ酸には20種類あり、元素にすれば僅か5種類です。金属など、あと数種の元素を使って10万種類もの機能があるのは、タンパク質を構成している原子の配置がそれぞれ違うからです。

構造解析でわかる「変異株」の感染力の強さの理由

 新型コロナウイルスについても、ウイルスのタンパク質の結合の様子を構造解析することで、さまざまなことがわかります。当初は「武漢型」が主流でした。その後「英国型」や「南ア型」などさまざまな変異株が発見され、ウイルス側のアミノ酸がどのように変わったら、元のウイルスより強く感染するのかを知ることができます。
 例えば、武漢型のたった1つのアミノ酸が変化し、手を取り合っていたアミノ酸の間に距離ができて動きやすくなった上に、ヒトの受容体との結合部位にさらにウイルスの変異が入り、感染力が強まったということも構造から理解できます。タンパク質の構造の何番目のアミノ酸がどう変わったために抗体やワクチンが効かなくなるのか、逆にどの部分を捕まえれば抗体が有効か、構造を見ながら議論することができます。

創薬に役立つ構造研究

 タンパク質の構造や機能を調べることは、創薬にも役立っています。例えば、2010~2016年に日本の厚生労働省にあたるアメリカの「FDA」に承認された210の薬のうち、184は構造研究をベースに作られたものです。このことからも、タンパク質の構造研究が創薬にとって重要な役割を果たしていることがわかります。インフルエンザの薬「タミフル」は、まさにタンパク質の構造研究の結果、生まれた薬です。今後も構造研究が進むことで、新型コロナウイルスの特効薬や変異株に対応するワクチン開発などへの貢献に繋がるでしょう。

参考資料
1:研究室紹介

この学問が向いているかも 構造生物学、薬学

大阪大学
薬学部 薬学科 教授
井上 豪 先生

先生がめざすSDGs
メッセージ

 私は夢を忘れず、夢を軌道修正しながら研究に没頭する楽しい日々を送っています。あなたにもぜひ「夢を忘れない」ことを大切にしてほしいです。なんにでも興味を持てば好きなことに出会えるでしょうし、早く好きなことに出会い夢を持てれば、それに一直線に向かえるので楽しくラクだと思います。
 もう1つ、上司から聞いて感銘を受けた言葉を贈ります。プライドには捨てるプライドと守るプライドの2種類があります。学ぶためには何歳でもプライドを捨て謙虚に、逆に、1つでも決めたことはプライドをかけて頑張り、これを続けてください。

先生の学問へのきっかけ

 大学は工学部に進学したのですが、たまたま結晶学の研究室に入り、タンパク質の構造解析に携わったことが今の研究のきっかけです。工学部の教授になったあとでも医薬の道に興味が尽きず、ついには2019年から薬学部に移り、現在に至ります。「夢があとから叶いつつある」という状況で、今は毎日研究に没頭する楽しい日々を送っています。新型コロナウイルスも、構造や機能がわかれば、どう戦えば良いか、戦い方がわかってきたように、誰も知らない生命科学の神秘の世界を知り、人の役に立てたりできることが構造生物学の魅力です。

先輩たちはどんな仕事に携わっているの?

製薬会社研究員/化学会社研究員/食品会社研究員/化粧品会社研究員/大学教員

研究室
大学アイコン
井上 豪 先生がいらっしゃる
大阪大学に関心を持ったら

 自由な学風と進取の精神が伝統である大阪大学は、学術研究でも生命科学をはじめ各分野で多くの研究者が世界を舞台に活躍、阪大の名を高めています。その理由は、モットーである「地域に生き世界に伸びる」を忠実に実践してきたからです。阪大の特色は、この理念に全てが集約されています。また、大阪大学は、常に発展し続ける大学です。新たな試みに果敢に挑戦し、異質なものを迎え入れ、脱皮を繰り返すみずみずしい息吹がキャンパスに満ち溢れています。

※夢ナビ講義はそれぞれの先生の見解にもとづく講義内容としてご理解ください。

TOPへもどる