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講義No.10793

食糧危機の回避のために「耐塩性の強い栽培イネ」を作る!

世界に広がる塩害

 人口増加に対する食料供給量の不足は、今世紀に予想される非常に大きな問題です。原因の一つには、農業に及ぼす気候変動の影響が挙げられます。乾燥・塩・洪水による害は、21世紀の世界の農業の三大ストレスです。その中で、土壌表面に無機塩類が過剰蓄積して起こる塩害は塩ストレスとも呼ばれ、雨の多い日本ではあまり知られていませんが、世界では古くから深刻な農業問題です。

塩害のメカニズムとは

 乾燥地帯では、気候条件や不適切な水管理により、土壌中の水が毛細管現象により吸い上げられ、溶けていた塩分だけが地表に残ります。まるで雪が降ったように地表が白い塩類で覆われる土地もあるほどです。最近では、地球温暖化で海水面が上昇し、沿岸部の農地では地下水に海水が混じることでも塩害が拡大しており、アジアの稲作地(例:ベトナム、カンボジア、バングラデシュ)では、イネの塩害が深刻化しています。

耐塩性遺伝子を探せ

 イネは、人類が8000年以上の時間をかけて野生イネ(=雑草)から育種したもので、世界中に多くの品種が存在します。西アジアのイネ品種の中には、塩害に強い性質を持つものがあります。イネのどの遺伝子がどのような役割を担うことで耐塩性が高くなるのかがわかれば、耐塩性が強い栽培品種を生み出せる可能性が高まります。現在、これまでの研究から耐塩性向上に貢献すると期待される遺伝子が、イネの中では実際にどのような働きをして、どの程度貢献するのか調べられています。また、別のアプローチとして、野生イネや耐塩性の強い在来品種から、未知の耐塩性遺伝子を発掘する試みも進められています。耐塩性遺伝子が見つかれば、古くからある品種改良の方法やゲノム編集技術を融合させて、耐塩性の強いイネの栽培品種を作り出せると期待されています。イネをはじめとする穀物の耐塩性を引き上げれば、塩害の被害が深刻な地域でも農産物の収量の安定化につながります。食糧問題を解決するためには、農業分野への科学的なアプローチも重要な鍵を握っているのです。


この学問が向いているかも 植物分子生理学、遺伝育種学

信州大学
繊維学部 応用生物科学科 教授
堀江 智明 先生

先生がめざすSDGs
メッセージ

 やりたいことがあるなら、恐れずにチャレンジしましょう。自分にはできないかもと思っても、まずは動いてみましょう。何事も完璧になることはないので、どこまで行ってもやり切れたと思えないかもしれないし、前進できていないと感じるかもしれません。それでも、目標に向かって動き続けることが大事です。コンプレックスに打ちのめされたら、その時は少し歩みを止めて、また顔を上げてチャレンジすればいいのです。やる気や情熱があれば何度でもファイティングポーズをとることができると思います。

先生の学問へのきっかけ

 高校生の頃に、オゾン層の破壊や二酸化炭素濃度の上昇などの地球環境問題が大きく取り上げられるようになり、漠然と未来に不安を抱いていました。ある時、砂漠の緑化と植物バイオテクノロジーという本に出会います。厳しい乾燥に耐性の植物を作り、砂漠化を食い止めようという内容でした。バイオテクノロジーで人類の役に立つような植物が作れるかもしれない、これは植物の研究者になるしかない、と思い極めました。この時の情熱は今でも私を支え、現実の壁にぶつかりながらも、塩害に負けない作物の作出をめざす原動力になっています。

先輩たちはどんな仕事に携わっているの?

種苗会社/製紙会社/教諭(中学理科)/製薬・薬品会社/農機具製造会社/衣料品会社(オーガニックコットン)/食品会社/環境・省エネ関連会社など

大学アイコン
堀江 智明 先生がいらっしゃる
信州大学に関心を持ったら

 信州大学は、人文・教育・経済・理学・医学・工学・農学・繊維の8学部からなり、すべての学部に大学院が設置されています。教員は約1千人、在学生数は約1万1千人で、世界各国からの留学生約400人も意欲的に学んでいます。
 松本、長野、上田、伊那に位置するいずれのキャンパスも、美しい山々に囲まれ、恵まれた自然のもと、勉学にも、人間形成の場としても、またスポーツを楽しむにも最適の環境にあります。さらに、地域との連携がきわめて良好であり、地域に根ざした大学としての特色も発揮しています。

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