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講義No.10761

学生が剣で斬り合う? 戦うことで平和を考えるドイツの決闘文化

現代に残る決闘

 ドイツの大学には「メンズーア」という、男性同士が1対1で剣を持って戦う決闘があります。攻撃するのは相手の顔と頭のみで、相手の攻撃を避けたり目を背けたりすると失格です。斬り合いというより、度胸試しの側面が強い点が特徴です。体は防具でしっかりと覆い、外科医の資格を持つ決闘専門員が立ち合うなど、決闘者の命を守るたくさんのルールが定められています。しかし、スポーツと違って勝敗はつきません。それよりも決闘から逃げず、最後までやり遂げることが重視されます。

刀傷は栄誉の証

 メンズーアのルーツは、古代ゲルマン人の「決闘裁判」です。「神は正しい者を助ける」という考えのもと、決闘で勝った方を正しいとするこの裁判は、後の騎士道精神やメンズーアに大きな影響を与えました。ドイツの大学でのメンズーアは約500年前から行われています。同郷の学生が結成したグループが「学生結社」となり、結社のメンバーが自分たちのプライドを見せるために、他地域出身者と決闘するようになったのが始まりです。当時、大学に通える人は限られたエリートのみで、メンズーアを経験して頭や顔に刀傷を負うことは、重要なステータスとなりました。あのゲーテやニーチェもメンズーアを経験し、刀傷を負っています。

戦いと平和

 メンズーアがはじまった当初は、現在のようなルールはなく、命を落とす学生が絶えませんでした。徐々にルールが整備されていきますが、幾度も禁止令が出されます。しかし、決闘を通して「若者を男にする」この文化を尊重する人も多く、ドイツ連邦最高裁判所は1951~53年に行われた「ゲッティンゲンのメンズーア訴訟」においてメンズーアを合法とする判決を出し、現在も続いています。
 人が剣で斬り合うという点では、野蛮ともいえるメンズーアですが、恐怖を乗り越えることで人を成長させ、対戦相手との深い絆を生むことも事実です。戦いを経験することで平和を考えることこそが、メンズーアという文化の大きな意義なのです。


この学問が向いているかも ドイツ文化史、決闘文化論

京都外国語大学
外国語学部 ドイツ語学科 教授
菅野 瑞治也 先生

先生がめざすSDGs
メッセージ

 現代は、インターネットやスマートフォンが普及していることもあり、誰もが知識を得られます。しかし、自分での目で確かめ、身をもって経験するということも、知識を持つことと同様に大切です。私も、「メンズーア」というドイツの決闘を経験したことで、研究の道に進むことになりました。
 高校時代は、自分が進む道がまだ定まらないかもしれませんが、心を内側に向けるのではなく、常に新しいこと、自分が知らないことに関心を持って、さまざまなことに積極的にチャレンジしてみてください。

先生の学問へのきっかけ

 子どもの頃から海外の文化が好きで、また父がドイツ語を使う医者であったこともあり、大学ではドイツ語学科に進みました。当初はカフカなどのドイツ文学を研究していましたが、修士課程で留学したドイツの大学で、500年間受け継がれてきたドイツの決闘文化に触れ、自分自身でも経験しました。決闘という行為がもつ意義や文化的な価値、またその決闘文化を支えるドイツの学生結社という組織の自由な思想に大きな感銘を受け、研究者となってドイツの決闘文化についての探究を続けています。

先輩たちはどんな仕事に携わっているの?

ベルリン日本大使館職員/ドイツの銀行の銀行員/ドイツの航空客室乗務員/ドイツの大学図書館員/ドイツのNGO団体職員/在日ドイツ企業社員/作家/日本のホテル 支配人/警察官

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菅野 瑞治也 先生がいらっしゃる
京都外国語大学に関心を持ったら

 京都外国語大学は2018年4月に「国際貢献学部」を開設。専攻語を徹底的に学ぶ「外国語学部」とともに、学部・学科の枠を越えた学びで、確かな語学力と豊かな教養を身に付ける、本物の学びを提供します。国際貢献学部では、国内外のコミュニティ(地域社会)に出向き、問題解決に取り組む「コミュニティエンゲージメント」を実施。外国語学部では、複数の言語に対する理解を深めるマルチリンガル教育、ネイティブ教員による少人数制の授業を実施。異文化理解力を養い、世界の諸問題を解決に導くチェンジメーカーを養成します。

※夢ナビ講義はそれぞれの先生の見解にもとづく講義内容としてご理解ください。

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